講演情報
[O12-4]大腸癌における腹腔細胞診の臨床意義
渡邊 淳弘1,2, 矢野 琢也2, 倉吉 学1, 小野 紘輔1, 下村 学2, 奥田 浩2, 赤羽 慎太郎2, 望月 哲矢2, 大段 秀樹2, 則行 敏生1, 中原 雅浩1 (1.尾道総合病院消化器外科, 2.広島大学病院消化器・移植外科)
【背景】
婦人科癌や胃癌,膵癌において,腹腔細胞診陽性例は有意な予後指標とされるが,大腸癌における細胞診陽性の臨床的意義はまだ明確ではない.
【対象と方法】
2012年4月から2019年3月までに当院にて腹水または腹腔洗浄細胞診で術中腹腔細胞診を行った後に,根治切除を行ったStage I~IIIの大腸癌454症例を対象とし,腹腔細胞診陽性が再発率や5年生存率に与える影響を解析した.
【結果】
腹腔細胞診陽性は454例中22例に認め,陽性率は4.9%であった.Stage別に見ると,Stage Iで1例,Stage IIで6例,Stage IIIで15例に細胞診陽性を認めた.多変量解析で細胞診陽性の独立したリスク因子として同定されたのは腹水細胞診と深達度T4の2因子であった.術後再発は全体で97例に認め,細胞診陰性群で81例(19%),陽性群で16例(73%)と,陽性群で有意に再発が多く認められた.多変量解析を行うと,細胞診陽性は大腸癌の独立した再発・死亡のリスク因子であった(再発率HR 5.01[1.66-15.13],p=0.004,5年生存率HR 6.33[2.14-18.68],p=0.0008).その他の因子としては,再発では手術時間300分以上・CEA 5.0ng/mL以上が,5年生存率では75歳以上・リンパ節転移陽性・手術時間300分以上・出血量100mL以上が独立したリスク因子として同定された.初回再発部位としては細胞診陽性群で腹膜播種7例,肝転移5例,肺転移5例,リンパ節転移3例,その他1例で腹膜播種再発が多い傾向にはあったが,細胞診陰性群との有意差は認めなかった.
細胞陽性群で術後補助化学療法(ACT)による再発抑制や予後延長効果を検討したところ,ACTの有無によって有意差は得られなかった.予後についても陽性群でACTの有無によって有意差は認めなかった.
【考察】
細胞診陽性率は4.9%と概ね既報通りであった.しかし,今回の検討では陽性群で有意に再発が多く,予後不良であると結果が得られ,他臓器癌と同様に大腸癌においても有意な予後指標となると考えられる.ACTによる再発抑制や予後延長効果は証明できず,細胞診陽性症例への術後治療開発については今後の課題であると考える.
婦人科癌や胃癌,膵癌において,腹腔細胞診陽性例は有意な予後指標とされるが,大腸癌における細胞診陽性の臨床的意義はまだ明確ではない.
【対象と方法】
2012年4月から2019年3月までに当院にて腹水または腹腔洗浄細胞診で術中腹腔細胞診を行った後に,根治切除を行ったStage I~IIIの大腸癌454症例を対象とし,腹腔細胞診陽性が再発率や5年生存率に与える影響を解析した.
【結果】
腹腔細胞診陽性は454例中22例に認め,陽性率は4.9%であった.Stage別に見ると,Stage Iで1例,Stage IIで6例,Stage IIIで15例に細胞診陽性を認めた.多変量解析で細胞診陽性の独立したリスク因子として同定されたのは腹水細胞診と深達度T4の2因子であった.術後再発は全体で97例に認め,細胞診陰性群で81例(19%),陽性群で16例(73%)と,陽性群で有意に再発が多く認められた.多変量解析を行うと,細胞診陽性は大腸癌の独立した再発・死亡のリスク因子であった(再発率HR 5.01[1.66-15.13],p=0.004,5年生存率HR 6.33[2.14-18.68],p=0.0008).その他の因子としては,再発では手術時間300分以上・CEA 5.0ng/mL以上が,5年生存率では75歳以上・リンパ節転移陽性・手術時間300分以上・出血量100mL以上が独立したリスク因子として同定された.初回再発部位としては細胞診陽性群で腹膜播種7例,肝転移5例,肺転移5例,リンパ節転移3例,その他1例で腹膜播種再発が多い傾向にはあったが,細胞診陰性群との有意差は認めなかった.
細胞陽性群で術後補助化学療法(ACT)による再発抑制や予後延長効果を検討したところ,ACTの有無によって有意差は得られなかった.予後についても陽性群でACTの有無によって有意差は認めなかった.
【考察】
細胞診陽性率は4.9%と概ね既報通りであった.しかし,今回の検討では陽性群で有意に再発が多く,予後不良であると結果が得られ,他臓器癌と同様に大腸癌においても有意な予後指標となると考えられる.ACTによる再発抑制や予後延長効果は証明できず,細胞診陽性症例への術後治療開発については今後の課題であると考える.