講演情報

[P11-1-7]直腸癌の管腔内転移による転移性痔瘻癌の1例

里見 大介, 小倉 皓一郎, 榊原 舞, 土岐 朋子 (国立病院機構千葉医療センター外科)
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長期経過の痔瘻に原発性痔瘻癌が発生することはよく知られているが,大腸癌を原発とした転移性痔瘻癌は比較的まれである.今回我々は,直腸癌からの管腔内転移をきたしたと思われる転移性痔瘻癌の1例を経験したので報告する.
症例は62歳,男性.3ヶ月程前から肛門周囲の腫脹と疼痛および排便時出血を主訴に近医受診.直腸癌の精査加療目的で当科紹介となった.肛門周囲10時方向に痔瘻の2次口を2か所認め,その皮下に5cm大の腫瘤を認めた.精査の結果,RbP 2型T3N1aM0 cStageIIIbおよびRa 2型 T3 N1a M0 cStageIIIbの重複直腸癌で痔瘻内への転移を疑った.これに対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術,D3郭清,痔瘻切除を施行した.会陰創に対しては持続陰圧処置を行いSSIはなく,排尿障害を認めたため自己間欠導尿を指導し第18病実に退院した.病理診断は重複直腸癌,tub2,RbP type2,pT4b(skin),N0(0/18),M0 pStageIIcおよびtub2 Ra 2型 type2,pT2,N0(0/18),M0 pStageIであった.痔瘻原発巣および瘻管内にもRbPの直腸癌同様に中分化型管状腺癌の充満を認めた.
RbP直腸癌,瘻管内,痔瘻原発巣の腫瘍組織の免疫染色ではいずれもCK7-/CK20+と一般的な直腸癌の形質であった.以上より本症例は直腸癌からの管腔内転移をきたしたと思われる転移性痔瘻癌であると考えられた.本症例に関して文献的考察を加えて報告する.