講演情報
[P10-1-4]パラシュート型PPH 85例の検討
須原 貴志1, 河合 雅彦2, 国枝 克之2 (1.下呂市立金山病院, 2.岐阜県総合医療センター)
【はじめに】stapled hemorrhoidopexy(PPH)は2014年の肛門疾患診療ガイドライン(では推奨度Cとされ,2020年のガイドライン第2版に至っては言及されていない.これは再発率の施設間格差が大きい点や,吊り上げ術式の一種ではあっても全周性に粘膜を切除するという侵襲性が原因と推察される.我々は透視下の実験から,巾着縫合を緩まないように閉めてかつシャフト目盛りが肛門縁で4cmにするなど高位でファイヤーした場合,巾着縫合部がシャフトの軸受けにひっかかりハウジングの中に取り込めずシャフトの半径分の粘膜しか切除できないため効果不十分例が発生することを見出した.巾着縫合を締めずに巾着縫合起始部の反対側に縫合糸をくぐらせるように置く糸(辻仲の糸)を併用すれば,巾着縫合部は軸受けを突破してハウジングの中に取り込まれて幅広い粘膜が切除できる.また巾着縫合を緩めないように締めても,低位での切除を意識すればヘッドと付属の肛門拡張器の外筒(外筒)の口側縁の間に粘膜が二重に挟み込まれ粘膜が固定されるため粘膜がハウジングの中に押し込まれ,これも幅広く粘膜が切除される.我々は巾着縫合を閉めずかつ低位で粘膜を固定,さらに巾着縫合部は外筒内の粘膜の折り返し点が合理的であることから同部をパラシュート型に牽引しつつ巾着縫合するPPH(P-PPH)を考案した.【目的】P-PPHの効果の検討【対象】当院および協力施設でP-PPHが施行された85例【方法】患者背景,手術時間,合併症,術後疼痛程度,再発の有無を評価 【結果】年齢65.7±17.1歳,男女比47:38 全周性63例 偏側性22例Goligher1,5例 2,5例 3,63例 4,12例 手術時間 43.0±9.18分 狭窄4例(4.7%),内2例は指ブジーにて軽快.2例はリングの切断によって容易に治癒.術後徐脈を1例に認めた.1例ペンタゾシン注射を要する程度の痛みを訴えた他はアセトアミノフェンあるいはNSAIDで対応可能.2例は全く痛みを訴えなかった.再発を1例(1.2%)に認めた.【考察】PPHの術後に発生する狭窄はリング状であり,容易に対処可能.【結語】P-PPHは再発率が低く術後の痛みが少ない術式である可能性があり,狭窄にも容易に対応しうる.