講演情報
[P13-1-1]同時性後縦郭転移を認めた上行結腸癌に対して根治切除を行った1例
深田 晃生1, 森 良太2, 竹田 充伸1, 関戸 悠紀1, 波多 豪1, 浜部 敦史1, 荻野 崇之1, 三吉 範克1, 植村 守1, 土岐 祐一郎1, 江口 英利1 (1.大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学, 2.大阪国際がんセンター消化器外科)
【背景】
大腸癌の遠隔転移は肝臓,肺,腹膜が全体の約84%を占め,縦郭への転移は少ない.一般的に転移性肺腫瘍由来のリンパ行性転移と考えられており,大半が肺転移を伴う.肺転移を伴わない縦郭転移の報告も散見するが肝臓や傍大動脈リンパ節への転移後に縦郭転移をきたしているものが多い.縦郭転移のみを認める大腸癌症例は極めて稀であり,若干の考察を踏まえて報告する.
【症例】
症例は74歳女性.便秘と右下腹部痛を主訴に前医を受診された.大腸内視鏡検査にて上行結腸癌の診断となり当科紹介となった.造影CT検査にて上行結腸の腫瘍近傍に腫大リンパ節と後縦郭に約1cmの腫瘤影を認めた.PET-CT検査では原発巣(SUVmax:20.8)および後縦郭の腫瘤影(SUVmax:14.9)にFDGの集積を認めたが,その他に遠隔転移を疑う所見は認めず,神経原性腫瘍など後縦隔原発腫瘍あるいは転移性腫瘍が疑われた.上行結腸癌の切除を先行する方針とし,腹腔鏡下結腸右半切除術(D3郭清)を施行した.病理診断はtub2>por2,pT4aN2aであった.術後のCT検査で新規病変は認めなかったが,後縦郭腫瘍の増大を認めたため,原発巣切除の2か月後に胸腔鏡下後縦郭腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は一部に腺腔構造を有し,免疫染色でCDX2陽性であり,大腸癌の縦郭転移の診断となった.現在,術後補助化学療法(XELOX療法)を施行しており,原発巣切除後6か月時点で無再発生存中である.
【考察】
Pub medにて“colorectal cancer”,“Solitary metastasis”,“mediastinum”と検索し,縦郭のみに転移を認めた大腸癌症例は3例のみであり,全て原発巣切除後の異時性転移であった.肺門・縦郭リンパ節転移陽性例の4年生存率は6.2%と予後不良とされているが,本症例のような同時性の単発転移切除後の予後や治療方針は定かでない.縦隔腫瘍の確定診断は容易ではなく,本症例のように同時性単発病変であっても転移の可能性を考慮して治療方針を決定する必要がある.縦郭腫瘍の増大は縦郭臓器の圧排や浸潤により致命的な合併症を誘発する可能性があるが,本症例では早急な対応により合併症なく根治切除が可能であった.
【結語】
単発性後縦郭転移を認めた上行結腸癌に対して原発巣及び転移巣を異時性に切除した1例を経験した.
大腸癌の遠隔転移は肝臓,肺,腹膜が全体の約84%を占め,縦郭への転移は少ない.一般的に転移性肺腫瘍由来のリンパ行性転移と考えられており,大半が肺転移を伴う.肺転移を伴わない縦郭転移の報告も散見するが肝臓や傍大動脈リンパ節への転移後に縦郭転移をきたしているものが多い.縦郭転移のみを認める大腸癌症例は極めて稀であり,若干の考察を踏まえて報告する.
【症例】
症例は74歳女性.便秘と右下腹部痛を主訴に前医を受診された.大腸内視鏡検査にて上行結腸癌の診断となり当科紹介となった.造影CT検査にて上行結腸の腫瘍近傍に腫大リンパ節と後縦郭に約1cmの腫瘤影を認めた.PET-CT検査では原発巣(SUVmax:20.8)および後縦郭の腫瘤影(SUVmax:14.9)にFDGの集積を認めたが,その他に遠隔転移を疑う所見は認めず,神経原性腫瘍など後縦隔原発腫瘍あるいは転移性腫瘍が疑われた.上行結腸癌の切除を先行する方針とし,腹腔鏡下結腸右半切除術(D3郭清)を施行した.病理診断はtub2>por2,pT4aN2aであった.術後のCT検査で新規病変は認めなかったが,後縦郭腫瘍の増大を認めたため,原発巣切除の2か月後に胸腔鏡下後縦郭腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は一部に腺腔構造を有し,免疫染色でCDX2陽性であり,大腸癌の縦郭転移の診断となった.現在,術後補助化学療法(XELOX療法)を施行しており,原発巣切除後6か月時点で無再発生存中である.
【考察】
Pub medにて“colorectal cancer”,“Solitary metastasis”,“mediastinum”と検索し,縦郭のみに転移を認めた大腸癌症例は3例のみであり,全て原発巣切除後の異時性転移であった.肺門・縦郭リンパ節転移陽性例の4年生存率は6.2%と予後不良とされているが,本症例のような同時性の単発転移切除後の予後や治療方針は定かでない.縦隔腫瘍の確定診断は容易ではなく,本症例のように同時性単発病変であっても転移の可能性を考慮して治療方針を決定する必要がある.縦郭腫瘍の増大は縦郭臓器の圧排や浸潤により致命的な合併症を誘発する可能性があるが,本症例では早急な対応により合併症なく根治切除が可能であった.
【結語】
単発性後縦郭転移を認めた上行結腸癌に対して原発巣及び転移巣を異時性に切除した1例を経験した.