講演情報

[P22-1-1]特異な形態を呈した 肛門周囲皮膚に生じた尋常性疣贅の1例

須田 和義1, 川﨑 俊一1,2, 本橋 行1,2, 田渕 崇伸1,2, 菊田 信一1,2 (1.みと肛門クリニック, 2.川崎病院)
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尋常性疣贅はウイルス性疣贅の代表で,通常手足に多く見られ,エンドウ豆大までの結節を生じ,典型的な臨床病型は表面粗造な類円形である.今回,外力により尖塔様変化を来したと推察された,肛門近傍に生じた尋常性疣贅の1症例について報告する.
【症例】86歳,女性
【主訴】肛門のできもの
【既往歴】認知症,パーキンソン病,甲状腺機能低下症
【現病歴】6~9ヶ月前頃より,肛門にできものありと,デイサービスの入浴介助スタッフに指摘されていたが,徐々に大きさが目立ってきたとのことで,家族に連れられ来院した.認知症のためか自覚症状は特になく,疼痛,出血,脱出の自覚も無いようであった.排便は2日に数回であった.
【当科所見・経過】肛門縁やや左後方に尖塔様形状の結節を認めた.硬く触知され,先端部は黒化し表面はやや不整であったが,基部は健常皮膚との境界は鮮明で可動性は良好であった.デイサービス入浴介助の妨げになるとのことで,家族希望もあり切除を局麻下に行った.病理組織では角質増殖性の尋常性疣贅であった.切除後は入浴介助時に牽引してしまい痛がらせたりすることがなくなり,本人が触って,便が残っていると言うことがなくなったとのことであった.
【考察】尋常性疣贅は,通常手足に多く見られ,典型的な臨床病型は表面粗造な類円形である.本症例は肛門近傍に生じまた,尖塔様であった.家族によれば,患者本人が肛門周辺を揉まないと便が出ないとのことで,そうすることによって,習慣的に排便が促される様であった.生じた疣贅がこういった外力刺激により,尖塔様変化を来し,増大したのではと推察された.治療としては,保険適用があり現在,疣贅治療の第1選択として最も頻用されているのは液体窒素凍結療法である.今回は,疣贅の数は1つであり,認知症でもあり即効的治療が望まれたことから,切除治療とした.医学中央雑誌での検索では,肛門付近に生じた尋常性疣贅として報告されているのは,布施らによる1例のみであった.