講演情報

[SY1-1]潰瘍性大腸炎関連腫瘍のpor/sig/muc成分検出率に関する検討

杉本 真也1, 榊原 亮哉1, 村上 宗一郎1, 韓 可1, 海江田 祐太1, 須永 将梧1, 水島 一郎1, 鈴木 祥平1, 吉松 裕介1, 清原 裕貴1, 三上 洋平1, 筋野 智久2, 高林 馨2, 加藤 元彦2, 岩男 泰3, 金井 隆典1 (1.慶應義塾大学医学部内科学(消化器), 2.慶應義塾大学医学部内視鏡センター, 3.慶應義塾大学予防医療センター)
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【目的】潰瘍性大腸炎(UC)では慢性炎症による大腸粘膜の傷害,再生のプロセスの繰り返しにより上皮細胞にダメージが蓄積され,炎症性発癌のリスクが高まる.近年の免疫統御療法の進歩により大腸全摘術を回避できるケースが増えており,予後に重大な影響を与える合併症である潰瘍性大腸炎関連腫瘍(UCAN)への関心は一層高まっている.UCANでは,低分化型腺癌/印環細胞癌/粘液癌(por/sig/muc)の発生率が散発性大腸癌に比して高く注意が必要であり,今回,UCANのpor/sig/muc成分に焦点を当てた検証を行った.
 【方法】1997~2022年に当院で大腸内視鏡検査を施行されたUC患者のうち,p53免疫組織化学を含む病理学的検討にて最終的にUC関連のhigh-gradeもしくはadenocarcinomaと診断された症例を対象とした.切除検体の病理診断から,por/sig/muc成分を含む病変(por/sig/muc群)と含まない病変(tub群)に分類し,2群間での予後および臨床病理学的・内視鏡的な比較検証を行った.
 【成績】UCAN 101例が解析対象となり,35例がpor/sig/muc群,66例がtub群に分類された.両群ともStage 0-IIにおける死亡例はなかったが,por/sig/muc群はtub群と比較して有意に深い浸潤がみられ(P<0.001),Stage III以上での予後の悪化(P<0.001)を反映した5年生存率はpor/sig/muc群がtub群よりも有意に低かった(67% vs. 96%,P=0.001).por/sig/muc成分が検出された切除検体の中で,生検時に同成分が同定された病変はわずか40%にとどまり,陰性的中率は79%であった.また,病期毎におけるpor/sig/muc群は,Stage 0(4/36,11%),I(8/20,40%),II(7/12,58%),III(10/14,71%),IV(6/8,75%)と高率に認められた.
 【結論】UCANは腫瘍内細胞不均一性などによって術前生検の段階ではしばしばpor/sig/muc成分が同定されない.そのため,UCANはpor/sig/muc成分を含む頻度が高い腫瘍であるという点を念頭において,常に注意深く治療方針を決定することが重要である.