講演情報
[PD9-10]腸間膜をクローン病の治療標的にする根拠とその可能性
荻野 崇之1, 森 良太1, 関戸 悠紀1, 宮﨑 葉月1, 泉谷 祐甫1, 長谷川 誠1, 中野 祐輔1, 深田 晃生1, 竹田 充伸1, 波多 豪1, 浜部 敦史1, 三吉 範克1, 植村 守1, 水島 恒和2, 土岐 祐一郎1, 江口 英利1 (1.大阪大学大学院医学系研究科消化器外科, 2.獨協医科大学下部消化管外科)
[はじめに]クローン病(CD)において,粘膜病変は病態の一部を示しているにすぎない.手術検体の肉眼的所見では,ほとんどの症例で腸間膜付着側に縦走潰瘍が見られ,炎症腸管周囲には腸間膜側から肥厚脂肪が巻き付くCreeping fatを認める.近年,Creeping fatを含む腸間膜切除がCD術後再発予防に効果的であると報告された.本研究では,CD手術検体からCreeping fatを採取し,術後再発に関与する免疫関連因子を探索した.
[方法]2019年から2022年の期間,CDに対する回盲部切除を伴う手術例の中で,検体採取同意が得られかつ術後内視鏡再発の有無情報が確認できた34例を対象とした(他の自己免疫性疾患既往あり,放射線化学療法既往あり,緊急手術,腸閉塞手術の症例は除外).Creeping fatと非肥厚腸間膜を採取し,酵素処理による細胞単離,フローサイトメトリー,RT-PCR,RNA-seq,免疫染色などの方法で解析した.内視鏡再発はRutgeerts score≧i2と定義し,再発群,非再発群に分けて,患者背景,免疫関連因子を検討した.
[結果]Creeping fatのRNA-seq解析より,自然免疫細胞関連遺伝子の発現上昇を認めた.自然免疫細胞解析より,Creeping fatには1型自然リンパ球(ILC1)が豊富に存在し,IFN-γ産生能が上昇していた.ILC1と炎症性マクロファージ(CD14+CD163low細胞)の間には正の相関があり,これらの細胞は腸間膜内脂肪細胞の周辺および腸間膜付着領域に集簇していた.内視鏡再発は11例で認め,非再発群と比較して,再発群ではCreeping fatのILC1頻度が有意に高いことがわかった(P=0.008).
[まとめ]Creeping fatではILC1およびマクロファージが凝集しており,術後再発症例ではILC1頻度が高いことがわかった.今後は腸間膜をCD治療標的に加え,病態に応じた治療戦略を立てていく必要があると考える.
[方法]2019年から2022年の期間,CDに対する回盲部切除を伴う手術例の中で,検体採取同意が得られかつ術後内視鏡再発の有無情報が確認できた34例を対象とした(他の自己免疫性疾患既往あり,放射線化学療法既往あり,緊急手術,腸閉塞手術の症例は除外).Creeping fatと非肥厚腸間膜を採取し,酵素処理による細胞単離,フローサイトメトリー,RT-PCR,RNA-seq,免疫染色などの方法で解析した.内視鏡再発はRutgeerts score≧i2と定義し,再発群,非再発群に分けて,患者背景,免疫関連因子を検討した.
[結果]Creeping fatのRNA-seq解析より,自然免疫細胞関連遺伝子の発現上昇を認めた.自然免疫細胞解析より,Creeping fatには1型自然リンパ球(ILC1)が豊富に存在し,IFN-γ産生能が上昇していた.ILC1と炎症性マクロファージ(CD14+CD163low細胞)の間には正の相関があり,これらの細胞は腸間膜内脂肪細胞の周辺および腸間膜付着領域に集簇していた.内視鏡再発は11例で認め,非再発群と比較して,再発群ではCreeping fatのILC1頻度が有意に高いことがわかった(P=0.008).
[まとめ]Creeping fatではILC1およびマクロファージが凝集しており,術後再発症例ではILC1頻度が高いことがわかった.今後は腸間膜をCD治療標的に加え,病態に応じた治療戦略を立てていく必要があると考える.