講演情報

[O9-4]当院における超低位前方切除におけるLARS対策の有用性の検討~肛門括約筋機能補填手技と保存的療法の併用~

大谷 剛, 武田 正, 竹原 裕子, 工藤 泰崇, 赤在 義浩 (岡山済生会総合病院)
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[背景]直腸切除術後のLow Anterior Resection Syndrome(LARS)は術後のQOLを低下させる合併症であり,薬物療法などの保存的療法や仙骨神経刺激療法などの外科的治療があるが,標準的な治療法はいまだ確立していない.
ロボット支援手術では精緻な手術が可能となり,合併症の軽減が期待されている.
当院でも2022年3月より超低位前方切除術(vLAR)後のLARS対策の手技の工夫として肛門括約筋間剥離後,剥離によって開大し短縮した機能的肛門括約筋間長の回復を目的に外肛門括約筋の縫縮する手技Anterior Anal Repair(AAR)を付加している.またほぼ同時期より直腸癌手術患者に対して骨盤底筋訓練や食事指導を開始した.当院におけるLARS対策の有用性を検討した.
[対象・方法]2020年1月から2023年3月までにロボット支援下直腸切除術を施行した92例のうち術前放射線治療症例を除くvLAR症例で,かつLARS score, Cleveland Florida Fecal Incontinence Score(CCFIS),Fecal incontinence Quality of life Scale(FIQL)のアンケート調査に協力が得られた症例を対象とし,アンケート調査を術前,術後6か月,術後1年時に施行した.
術式別にvLAR群(vL群3例)とvLAR+AAR+骨盤底筋訓練群(vL+A+R群6例)で後方視的に検討した.
[結果]患者背景はvL群/vL+A+R群 年齢中央値(歳)71/65.4 性別 M:F 2:1/6:0であった.vL群/vL+A+R群のアンケート調査の結果は,LARS score;術前37/26,術後6か月34/30,術後1年34/34,CCFIS;術前4/0.5,術後6か月12/6,術後1年12/8,FIQL;lifestyle術前4.0/2.4,術後6か月2.3/3.8,術後1年2.5/3.85,coping術前3.3/2.3,術後6か月1.6/2.7,術後1年2.4/3.3,depression術前3.0/3.1,術後6か月3.0/3.85,術後1年2.8/3.79,embarrassment術前3.7/3.0,術後6か月2.3/3.3,術後1年2.2/3.5であった.
[考察]今回検討では症例数も少なく,いずれにおいても有意差を認めるものはなかった.LARS scoreでは効果を反映する結果は得られなかったが,CCFIS,FIQLの各項目のいずれにおいても術後6か月,1年とL+A+R群においてscoreが良い結果が得られており,今後さらなる症例の蓄積を行い,検討を行っていく必要がある.