講演情報
[SR7-1]肛門近傍下部直腸癌に対する肛門温存術後の排便機能比較~Ultimate試験サブ解析 ISR vs LAR~
沼田 正勝1, 渡邉 純2, 諏訪 雄亮1, 塚田 祐一郎3, 伊藤 雅昭3, 渡邊 昌彦4 (1.横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科, 2.関西医科大学下部消化管外科, 3.国立がん研究センター東病院大腸外科, 4.北里大学北里研究所病院)
背景:肛門管近傍の下部直腸癌に対する肛門温存術式としてIntersphincteric Resection:ISRとLow Anterior Resection:LARが挙げられる.腫瘍の位置が肛門縁(AV)から4-5cmの場合,どちらの術式も実施可能であるケースが多く,安全性,根治性,肛門機能,排尿性機能を包括的に評価することが重要である.
方法:Ultimate試験は,AV5cm以内の肛門管近傍cT1-2N0M0下部直腸癌に対する腹腔鏡下手術の安全性と有効性を検討するために行われた多施設前向き第二相試験である.同試験全症例(n=299)の中からAV4-5cm症例を抽出し,ISR群(n=65)とLAR群(n=70)の2群で,アウトカムを包括的に比較した.肛門機能はWexner Score(WS)を用い,術前スコアをベース値とし,術後(ストーマ閉鎖後)3,6,12,24,36か月後にベース値からの変化量を評価した.排尿機能はIPSS,OABSS,ICIQ-SFを用い,男性性機能はIIEFを用いて評価した.
結果:ISR vs LARの順で記載.手術時間は同等で(278 vs 271min),出血量はLARで少なかった(61 vs 37ml).両群で開腹移行なし.縫合不全(10.8% vs 8.6%)を含め,合併症発生率に有意差なし.Distal marginはISRで長く(18.3mm vs 12.8mm),RM陰性は全例で達成されていた.3年累積局所再発率は両群で同等であった(4.7% vs 4.8%).WSのベース値からの変化量は,両群ともに術後3ヶ月で最も大きく(12.9 vs 10.2),術後6カ月(11.4 vs 8.1),術後1年目(9.8 vs 6.7)と経時的に低下した.さらに,術後2年目(9.3 vs 6.3),術後3年目(8.7 vs 6.2)にも低下を認め,両群とも長期に渡って肛門機能が緩やかに改善する事が示唆された.WS変化量は一貫してISR群で大きく,その差は2.5~3.3点であった.排尿機能,男性性機能は両群に差を認めなかった.
結論:肛門管近傍(AV4-5cm)の下部直腸癌に対するISRとLARは,安全性,根治性,排尿性機能の観点で両者に差はなく,肛門機能ではLARが優れる可能性が示唆された.
方法:Ultimate試験は,AV5cm以内の肛門管近傍cT1-2N0M0下部直腸癌に対する腹腔鏡下手術の安全性と有効性を検討するために行われた多施設前向き第二相試験である.同試験全症例(n=299)の中からAV4-5cm症例を抽出し,ISR群(n=65)とLAR群(n=70)の2群で,アウトカムを包括的に比較した.肛門機能はWexner Score(WS)を用い,術前スコアをベース値とし,術後(ストーマ閉鎖後)3,6,12,24,36か月後にベース値からの変化量を評価した.排尿機能はIPSS,OABSS,ICIQ-SFを用い,男性性機能はIIEFを用いて評価した.
結果:ISR vs LARの順で記載.手術時間は同等で(278 vs 271min),出血量はLARで少なかった(61 vs 37ml).両群で開腹移行なし.縫合不全(10.8% vs 8.6%)を含め,合併症発生率に有意差なし.Distal marginはISRで長く(18.3mm vs 12.8mm),RM陰性は全例で達成されていた.3年累積局所再発率は両群で同等であった(4.7% vs 4.8%).WSのベース値からの変化量は,両群ともに術後3ヶ月で最も大きく(12.9 vs 10.2),術後6カ月(11.4 vs 8.1),術後1年目(9.8 vs 6.7)と経時的に低下した.さらに,術後2年目(9.3 vs 6.3),術後3年目(8.7 vs 6.2)にも低下を認め,両群とも長期に渡って肛門機能が緩やかに改善する事が示唆された.WS変化量は一貫してISR群で大きく,その差は2.5~3.3点であった.排尿機能,男性性機能は両群に差を認めなかった.
結論:肛門管近傍(AV4-5cm)の下部直腸癌に対するISRとLARは,安全性,根治性,排尿性機能の観点で両者に差はなく,肛門機能ではLARが優れる可能性が示唆された.