講演情報

[SR6-6]閉塞性大腸癌に対する大腸ステント留置後手術の治療成績―広島県の多施設共用データベースを用いた検討―

小野 紘輔, 下村 学, 奥田 浩, 矢野 琢也, 赤羽 慎太郎, 望月 哲矢, 今岡 洸輝, 別木 智昭, 石川 聖, 渡邊 淳弘 (広島大学消化器移植外科)
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【背景】
 閉塞性大腸癌治療において,術前減圧目的のステント留置(bridge to surgery:BTS)は,短期成績が良好とされている.一方で長期予後にあたえる影響については一定の見解がない.
【対象と方法】
 広島臨床腫瘍外科研究グループ(HiSCO)関連施設共用大腸癌データベースを用いて患者を抽出した.2017年4月から2020年3月までに,イレウス管留置後,あるいはステント留置後に手術を行ったStageII・IIIの大腸癌205症例を対象とし,左側大腸癌(下行結腸から直腸)及び右側大腸癌(盲腸から横行結腸)をイレウス管留置群(I群),ステント留置群(S群)に分けて解析した.
 【結果】
左側大腸癌はI群30例,S群105例であった.患者背景は両群間で差はなかった.S群で術中出血量が少なく(S群40ml,I群175ml),Clavien-dindo分類Grade3以上の合併症が少なく(S群6.7%,I群23.3%),術後在院日数が短かった(S群13日I群17.日).OS,RFSに関して両群間で差はなかった(5年OS:S群68.3%,I群62.4% 5年RFS:S群71.5%,I群57.7%).右側大腸癌はI群31例,S群39例であった.患者背景は,I群で年齢が高く(S群69歳,I群82歳),リンパ節転移陽性例が多く(S群49%,I群74%),術後補助化学療法非施行例が多かった(S群53%,I群23%).術後在院日数がS群で短かった(S群11日,I群 21日).OSは差がなかったがI群で有意にRFSが低下していた(5年OS:S群76.9%,I群56.6% 5年RFS:S群74.9%,I群48.7%).両群間の背景因子を傾向スコアマッチングで揃えた解析でもI群でRFSが低下していた(5年RFS:S群74.9%,I群51.2%).
【考察】
両側とも短期成績はBTSが概ね良好な結果であった.長期成績においてもBTSがイレウス管留置と比較し予後を悪化させるものではなかったが,本検討では治療法により患者背景が異なっていたことも結果に影響していた可能性があり,今後は他の治療法も含めた患者群で検討を行いたい.