講演情報

[R14-4]大腸癌pStage II-III患者における肺生理機能の老化と予後への影響

木原 恭一, 安井 千晴, 石黒 諒, 柳生 拓輝, 河野 友輔, 山本 学, 松永 知之, 徳安 成朗, 坂本 照尚, 藤原 義之 (鳥取大学病院消化器外科)
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背景:悪性疾患に対し,侵襲的な診療を検討する際,暦年齢は予後因子として常に考慮される一方,患者毎に異なる生理的な“老い”は担当医が包括・直感的に判断していることが多い.日本呼吸器学会により肺機能の老化指標として肺年齢が定義されているが,大腸癌の予後との関係は明らかでない.方法:2009年から2018年の10年間に当院で大腸癌を切除された704人のうち,pStage II-IIIだった419人から術前の肺機能検査が未実施だった15人を除く404人のデータを抽出した.暦年齢と肺年齢を80歳で区切りクロス集計して予後を解析した.結果:肺年齢≥80歳群が161人,肺年齢<80歳群が243人であった.前者で男性,喫煙経験あり,Alb.<4.1g/dL,PNI<40,ASA-PS≥3の比率が大きかったものの(すべてp<0.001),術前・術後の補助療法ありの比率は小さく(それぞれp=0.038,<0.001),術後入院期間が2週間を超える症例が多くなっていた(p=0.007).腫瘍学的因子として前者でCEA>5.0ng/mLの比率が大きかったものの(p=0.048),CA19-9,原発巣の左右,pT,pNは両群間で有意差を認めていない.暦年齢<80歳かつ肺年齢<80歳(Group A),暦年齢<80歳かつ肺年齢≥80歳(Group B),暦年齢≥80歳かつ肺年齢<80歳未満(Group C),暦年齢≥80歳かつ肺年齢≥80(Group D)の内訳は218/105/25/56人であった.relapse free survival(RFS),disease specific survival(DSS),overall survivalの全てでGroup Dが最も予後不良だった(それぞれp=0.043,=0.002,<0.001).他方,RFSはGroup AがBおよびCよりも不良だったが,DSSではGroup A,B,Cの曲線が近似しており,肺年齢≥80歳では再発後の治療の忍容性,強度が小さかった可能性が考えられた.