講演情報

[VSY2-3]慢性裂肛に対するLSISを伴った裂肛切除術

小村 憲一1, 岩垂 純一2 (1.小村肛門科医院, 2.岩垂純一診療所)
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慢性裂肛に対し行われている皮膚弁移動術は根治性はあるが,侵襲は大きく術後創として不具合な輪状に配列された創を肛門管内に形成してしまう課題がある.我々は肛門手術においては縦方向の手術創が理想であると考え,狭窄解除は側方内括約筋切開術(LSIS)で行い,慢性裂肛病変部を最小限に切除し痔核結紮切除術と同様に縦方向に2層で縫合する術式を行っており,ビデオにて供覧する.
I.LSIS(Notaras法)
1.メス挿入部位の決定
裂肛病変部を避けて,側方で挿入部位を決定する.
2.開創器の挿入
開創器を十分に拡張させ,索状に内括約筋が触れるようにする.
3.浸潤麻酔
肛門上皮と括約筋間に隙間を形成するように注入する.
4.メスの挿入
内括約筋下端の外側から,cryptとctyptの間にメスを挿入し刃先を肛門上皮下に透見しながら歯状線手前まで挿入する.
5.内括約筋の切開
メスの刃を外側に向け,開創器をさらに開大させ,内括約筋を伸展させることで,メスを当てて切開する際の手応えを容易とし,メスでの鋭的な切開は,内括約筋の表面にとどめる.メスを抜去後,切開部を指で圧迫しつつ鈍的に切開を加え,程よく拡張度合いを調整する.
6.切開後の圧迫止血
開創器の柄を切開部に押し当てて拡張し粘膜面より圧迫し止血を図りつつ,次の操作に移る.
II.合併病変の処理
1.肛門ポリープ,瘢痕化した裂肛部分,skin tagを必要最小限の切除となるように留意しつつ痔核結紮切除術に準じて切除する.
2.開創器は拡張したまま,切除創部の2層縫合を行う.
まず左右上皮下の結合組織両側断端を底部筋層にもかけるように運針しつつ縫合する.次いで切離粘膜・肛門上皮端を肛門縁まで連続縫合半閉鎖し,2層縫合とする.
以上の術式では狭窄解除を裂肛部分でなくLSISで解除するため,裂肛病変部の切除侵襲が少なく,縫合が容易であり,かつ2層縫合でするため創の哆開を生じにくく,根治性がある.
手術創は縦方向の手術創となり,LEと同等の少ない侵襲で術後疼痛も少なく術後管理は容易となり日帰り手術で施行しうる.