講演情報

[PD2-2]下部消化管手術におけるAI技術の活用:手術ナビゲーションから患者ケアまで

三吉 範克1,2, 藤野 志季1,2, 竹田 充伸1, 関戸 悠紀1, 波多 豪1, 浜部 敦史1, 荻野 祟之1, 植村 守1, 山本 浩文1, 土岐 祐一郎1, 江口 英利1 (1.大阪大学消化器外科, 2.大阪国際がんセンター・がん医療創生部)
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当グループではAI研究として,Society 5.0の実現と内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に関して,病院全体でAIを活用する「AIホスピタルによる高度診断・治療システムの研究開発」を行ってきた.特に下部消化管手術におけるAI技術の活用として,治療前の画像検査データから,疾病の診断や進行度の予測,腹腔鏡およびロボット手術のビデオ動画から手術機器や遺物を検出するシステムの開発と至適な切離領域の可視化など,AI技術を実臨床で活用,実装を目指す取り組みを進めている.術中にウェアラブルデバイスを用いた3D画像シミュレーションでは断層モデルをホログラム化する技術を開発し,拡大手術や2チームアプローチなど複雑化する手術手技に活用できるようなデバイスの構築をプログラミングおよびデータ解析チームと協力して行っている.臨床データを用いて,検査数値やロジカルなデータを基にディープラーニング技術を活用した合併症予測モデルの構築を行っている.画像データについてはAIによる予測モデルがどのように判断して決定に至ったかという点を可視化しながら,精度と再現性の高いアプリケーションの開発を進めている.ストーマ造設後の患者の装具の状態を予測するようなAIアプリや術後の栄養状態を予測するようなAI解析モデルは,オンライン診療と組み合わせることで退院後の外来での患者のケアに適応するシステムであると考えている.外科診療としても,周術期の合併症を予測する研究的な試みのみならず,実用的な場面として医師の説明を代替するアバターやメタバースの活用,遠隔診療につなげる取り組みなどを行なっており,AI技術を活用した手術・診療支援システムは,個人情報の取り扱いなど解決すべき重要な課題も残されているが,単なるコンピューターによる解析の範囲を超え,リアルタイムで包括的な情報の共有と融合を可能にするものであると考える.