講演情報

[O24-5]再発からみた深部痔瘻手術手技の必要条件とは

小野 芳人1, 竹田 正範1, 松本 欣也1, 串畑 史樹1, 渡辺 学1, 渡辺 英生1, 鉾石 文彦2 (1.医療法人ミネルワ会渡辺病院, 2.ほこいし医院)
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<はじめに>III型,IV型の痔瘻手術は,機能を保ちつつ根治性を追求する必要があり,知識や経験を要する.当院ではHanley変法を中心とした開放術式や筋肉充填術式も行ってきたが,前者では治癒期間が長く,肛門管の変形や機能の不可逆性の低下を,後者でも機能低下や再発を経験したため,最近ではシートン法を中心に行っている.開放術式や筋肉充填術式も含め,シートン法でも再発症例はあり,これを検討し,根治性を担保できる必要条件を考えた.
 <対象>自分が赴任した2010年から2024年3月まで,当院で手術を行ったIII型痔瘻241例,IV型痔瘻15例を対象とした.
 <結果>III型痔瘻は,すでにシートン法が多く,Hanley変法6例,再発は遺残瘻管1例.筋肉充填術式は8例,3例に原発巣再発を認め,2例開放術,1例シートン法で対応したが,開放術1例には排便障害が出現した.その他はシートン法で,遺残瘻管再発5例,難治創2例,原発巣再発7例(うち急性期5例)認めた.IV型痔瘻は,挙筋穿破型が多く,III型痔瘻と同様のシートン法が行われたが,原発巣再発を2例認めた.S状結腸憩室穿通,UC術後縫合不全,直腸憩室穿通の特殊3例はドレナージで状態改善を得た.
 <考察>III型の再発には瘻管再発が散見され,原発巣を確実に処理するためにも瘻管のくり抜きは有効と考える.原発巣再発の場合は一次口再開通を伴う場合が多く,筋肉充填では掻破・充填不足,シートン法の場合は急性期症例のドレナージ不足,IV型の場合は挙筋より手前の掻破ドレナージ不足が考えられた.原発巣の十分な掻破または切除は必須で,急性期は不足になりやすい.一次口~一次瘻管の処理は必要と考えるが,一次口を誤らずにシートンをかければ問題ない.くり抜き切除を併用したシートン法であれば,いずれもクリアできるが,通院でのきめ細かい創管理を怠ると,難治創になる.
 <まとめ>III型,IV型痔瘻術後再発症例から手術手技の必要条件を考えた.二次瘻管は切除が望ましい,原発巣処理は必須,一次口~一次瘻管の確実な処理も必須で,急性期根治術は避けることが望ましい.くり抜き切除を併用したシートン法が簡便でよいが,術後の創管理が必須である.