講演情報

[P7-2-1]多剤failureの重症潰瘍性大腸炎に対し,Upadacitinibが奏功した1例

辛島 遼, 鳥羽 崇仁, 井上 楠奈子, 北條 紋, 藤本 愛, 松田 尚久 (東邦大学医療センター大森病院消化器内科)
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症例は53歳男性.20XX-5年,前医にて全大腸炎型潰瘍性大腸炎(UC)の診断となり,5-ASA製剤にて加療を行っていた.臨床的寛解を維持していたが,20XX年5月に再燃し,当院紹介受診した.入院の上,第1病日よりPrednisolone(PSL)60mg点滴静注で寛解導入を行ったが,改善に乏しくPSL抵抗性と判断し,第6病日にTacrolimus変更したところ,徐々に症状は改善となり第46病日に退院となった.20XX年8月に大腸内視鏡検査(CS)施行したところ,Mayo endoscopic subscore(MES)1程度の炎症が残存しており,Tacrolimus終了後より維持治療としてVedolizumab開始とした.一時的に臨床的寛解は得られていたが,20XX+1年3月より症状再燃し,同年5月にCSを施行したところ,MES3まで増悪したためInfliximabに治療変更とした.治療変更後は部分的に奏功し,5ヶ月後のCSではMES2まで改善したが,20XX+2年5月には再度血便が出現し,経時的に増悪傾向であったため,CS再施行したところMES3まで増悪しており,Upadacitinibに治療変更とした.変更後は開始3日目より臨床的に改善を認め,その後も臨床的寛解を維持し,2ヶ月投与後にCSを施行したところ,短期間にもかかわらず,MES1まで改善が得られた.Upadacitinib開始後から8ヶ月経過したが臨床的寛解を維持し,特に有害事象もなく治療継続している.多剤failureの重症UCに対してUpadacitinibが奏功した症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.