講演情報
[P2-1-4]Idiopathic myointimal hyperplasia of mesenteric veinsによると考えられたS状結腸穿孔の一例
浅井 竜一, 田島 ジェシー雄, 木山 茂, 松本 圭太, 横井 亮磨, 久野 真史, 鷹尾 千佳, 河原 樹, 坂本 倫太郎, 伊藤 吉貴, 田中 善宏, 村瀬 勝俊, 松橋 延壽 (岐阜大学消化器外科)
Idiopathic myointimal hyperplasia of mesenteric veins(IMHMV)は,腸間膜静脈の内膜肥厚による還流障害を病態とした稀な虚血性大腸疾患である.左側結腸に発生することが多いとされ,診断が困難で手術加療を要することも多い.今回,IMHMVによると考えられたS状結腸穿孔の一例を経験したため報告する.【症例】70歳代,男性.左腎癌,多発骨転移に対して当院泌尿器科にてニボルマブ,カボザンチニブによる化学療法中.2ヶ月前より下痢,血便を認めるようになり下部内視鏡検査を施行,S状結腸に全周性の潰瘍性病変を認めていたが経過観察となっていた.左下腹部痛,40℃の発熱を認め,当院救急外来を受診し,S状結腸穿孔の診断にて緊急手術目的に当科入院となった.【下部消化管内視鏡検査(手術1ヶ月前)】S状結腸に境界明瞭な全周性の潰瘍性病変あり虚血性腸炎の疑い.生検では特異的な炎症像の指摘には至らず.【術前単純CT】腹腔内に遊離ガス像あり.SD junction部結腸では腸管外に突出する便塊様の構造あり.左腎癌および多発骨転移に著変はなし.【手術】手術時間:153分,出血量:35g.手術所見:左下腹部を中心に膿性腹水の貯留あり,SD junction部に穿孔部を確認.外側の腹壁と強固に固着しており穿通所見あり.穿孔部を含め腸管を切除し洗浄後,下行結腸単孔式人工肛門を造設.【病理診断】潰瘍周囲の粘膜下層,漿膜下層に静脈内膜の肥厚あり,IMHMVに相当する所見.【術後経過】術後経過は良好で合併症なく経過したが,ADLの低下あり術後30日目にリハビリ転院し,58日目に自宅退院となった.退院後,腎癌に対する化学療法を再開もPDとなり緩和ケアへ移行している.【結語】Idiopathic myointimal hyperplasia of mesenteric veinsは比較的稀な疾患であるため,内科医を含めた一般臨床医の認知度は低い.内視鏡的診断が困難かつ,内科治療抵抗性で,穿孔を来しうるため注意が必要である.