講演情報

[R7-1]当科における超高齢大腸癌患者に対する手術の実際

溝口 正子, 飯田 聡, 犬飼 瑞穂, 大友 真由子, 渋谷 豪, 齋藤 賢将, 古山 貴基, 村瀬 秀明, 天笠 秀俊, 鴈野 秀明, 今井 健一郎, 東海林 裕, 福田 晃, 安藤 昌之 (東京都立病院機構東京都立豊島病院外科)
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【背景】本邦では高齢化が進み,厚生労働省の令和4年簡易生命表によれば男性の平均寿命は81.05年,女性の平均寿命は87.09年とされ,また90歳まで生存する人の割合は男性25.5%,女性49.8%とされている.未曾有の高齢化社会において超高齢大腸癌患者の診療・手術機会が増加しているが,そのエビデンスは乏しい.そこで今回,当科において85歳以上の原発性大腸癌患者に対して手術を施行した計62例について検討した.【症例】2018年4月から2023年3月までに当科において手術を施行した患者は全62例で,58例が原発巣に対する根治切除術,4例が人工肛門造設術であった.このうち,原発巣切除術を施行した58例について検討した.年齢中央値88歳(85-101歳),男性18例/女40例,出血や狭窄・閉塞などなんらかの症状を有したものは31例であった.アプローチは開腹17/腹腔鏡33(センハンスデジタルラパロスコピー3例を含む)/ロボット(daVinci Surgical System)8例であった.手術時間中央値247.5分(101-403分),全合併症率24.1%(14例),合併症のClavien-Dindo分類はI 0例/II 10例/IIIa 2例/IIIb 1例/IV1例であった.術後在院日数中央値18.6日(6-62日)であった.さらに90歳未満群(43例)と90歳以上群(15例)に分けて比較検討した.Wilcoxon順位和検定で比較を行い,手術時間(中央値233.1分 vs. 250分,p=0.324),術後在院日数(中央値18.1日 vs. 20.2日,p=0.516)に有意差は見られなかった.また,二項検定にて全合併症率に有意差は見られなかった(10例(23.3%)vs. 4例(26.7%),p=0.792).一方,原発性大腸癌に対する対症療法として人工肛門造設術のみを施行した症例は,同期間において4例であった.全例が女性で,年齢中央値94.5歳(85-103歳)であった.【結語】当科において,過去5年間に85歳以上の原発性大腸癌に対して根治切除を行った症例は58例,人工肛門造設術のみを施行した症例は4例であった.85歳以上の超高齢者は,併存疾患,ADL,認知機能など多くの問題を抱えていることも多く,症例によってその背景は多様である.術前の十分なリスク評価により,根治切除も選択肢の一つと考えられる.