講演情報
[PD1-5]直腸切除術後における低位前方切除後症候群(LARS)スコア増悪のリスク因子に関する検討
田口 祐輔, 佐々木 和人, 坂元 慧, 野澤 宏彰, 室野 浩司, 江本 成伸, 金子 建介, 横山 雄一郎, 松崎 裕幸, 阿部 真也, 永井 雄三, 品川 貴秀, 舘川 裕一, 岡田 聡, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
【背景・目的】直腸切除術後の低位前方切除後症候群(LARS)スコア増悪のリスク因子について,術前化学放射線療法(CRT)の有無や肛門マノメトリーの値を含めて解析した報告は少なく,これを明らかにすることを本研究の目的とした.
【方法】2018年5月-2022年5月に当科で低位前方切除術(LAR)または括約筋間直腸切除術(ISR)を行った下部直腸悪性腫瘍症例のうち,術後1年以上経過した時点でのLARSスコアおよび最大静止圧(MRP),最大随意収縮圧(MSP),機能的肛門管長(HPZ)が測定可能であった79例(男性47例)を対象とした.術後LARSスコアが30点以上をMajor LARS,21-29点をMinor LARS,0-20点をNo LARSとして,臨床病理学的因子との相関を解析した.
【結果】直腸癌 67例,直腸NET 12例であった.術式はLAR 70例,ISR 9例であり,30例(38%)に術前CRTが施行された.
術後1年以上経過時の評価では,Major LARS 41例(52%),Minor LARS 25例(32%),No LARS 13例(16%)であった.Major LARS vs. Minor/No LARS群の単変量解析では,年齢65歳以下がMajor LARS群で有意に高頻度であった(78% vs 53%,p=0.02).性別(男性:56% vs 63%,p=0.27)やBMI(中央値23 kg/m2(20-25)vs 23 kg/m2(20-25),p=0.57),術式(LAR:88% vs 89%,p=0.12),術前CRT(46% vs 29%,p=0.11),腫瘍の肛門縁からの距離(中央値5cm(4-6)vs 5cm(4-6),p=0.96),diverting stomaの造設(73% vs 55%,p=0.10)において有意差を認めなかった.術前の肛門機能と術後LARSの解析では,Major LARS群で術前MRP(中央値51mmHg(34-64)vs 41mmHg(28-50),p=0.04)が有意に高値であったが,MSP(中央値143mmHg(87-194)vs 128mmHg(94-216),p=0.97)に有意差を認めなかった.多変量解析では,年齢(65歳以下)のみがMajor LARSの独立した危険因子(p=0.02)であった.年齢(65歳以下)別にLARSスコアの各項目を比較したところ,排便回数(中央値4(2-4)vs 2(2-4),p=0.003)のみが若年群で有意に高値であった.
【結語】直腸切除術後の長期経過時におけるMajor LARSにおいて,年齢(65歳以下)がリスク因子になりうることが示され,排便回数の増加は若年患者のLARSスコア増悪に寄与する可能性が示唆された.
【方法】2018年5月-2022年5月に当科で低位前方切除術(LAR)または括約筋間直腸切除術(ISR)を行った下部直腸悪性腫瘍症例のうち,術後1年以上経過した時点でのLARSスコアおよび最大静止圧(MRP),最大随意収縮圧(MSP),機能的肛門管長(HPZ)が測定可能であった79例(男性47例)を対象とした.術後LARSスコアが30点以上をMajor LARS,21-29点をMinor LARS,0-20点をNo LARSとして,臨床病理学的因子との相関を解析した.
【結果】直腸癌 67例,直腸NET 12例であった.術式はLAR 70例,ISR 9例であり,30例(38%)に術前CRTが施行された.
術後1年以上経過時の評価では,Major LARS 41例(52%),Minor LARS 25例(32%),No LARS 13例(16%)であった.Major LARS vs. Minor/No LARS群の単変量解析では,年齢65歳以下がMajor LARS群で有意に高頻度であった(78% vs 53%,p=0.02).性別(男性:56% vs 63%,p=0.27)やBMI(中央値23 kg/m2(20-25)vs 23 kg/m2(20-25),p=0.57),術式(LAR:88% vs 89%,p=0.12),術前CRT(46% vs 29%,p=0.11),腫瘍の肛門縁からの距離(中央値5cm(4-6)vs 5cm(4-6),p=0.96),diverting stomaの造設(73% vs 55%,p=0.10)において有意差を認めなかった.術前の肛門機能と術後LARSの解析では,Major LARS群で術前MRP(中央値51mmHg(34-64)vs 41mmHg(28-50),p=0.04)が有意に高値であったが,MSP(中央値143mmHg(87-194)vs 128mmHg(94-216),p=0.97)に有意差を認めなかった.多変量解析では,年齢(65歳以下)のみがMajor LARSの独立した危険因子(p=0.02)であった.年齢(65歳以下)別にLARSスコアの各項目を比較したところ,排便回数(中央値4(2-4)vs 2(2-4),p=0.003)のみが若年群で有意に高値であった.
【結語】直腸切除術後の長期経過時におけるMajor LARSにおいて,年齢(65歳以下)がリスク因子になりうることが示され,排便回数の増加は若年患者のLARSスコア増悪に寄与する可能性が示唆された.