講演情報

[PD8-6]大腸癌腹膜転移に対する術中腹腔内温熱化学療法の短期成績に及ぼす影響

合田 良政1, 片岡 温子1, 大谷 研介1, 清松 知充1, 矢野 秀朗1,2 (1.国立国際医療研究センター, 2.サウサンプトン大学病院)
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【はじめに】
欧米では大腸癌腹膜転移に対する完全減量切除(CRS)と術中腹腔内温熱化学療法HIPEC)による積極的治療の有効性が報告されているが,2018年のPRODIGE7 trialではHIPECの上乗せ効果は証明されず,むしろ合併症が多いとされた.加えて,本邦では特定臨床研究法の施行の影響もあり,当院では2019年以降はHIPECを併用せず,CRS単独にて治癒を目指している.
【目的】
大腸癌腹膜転移に対するHIPECの短期成績に及ぼす影響を検討する.
【対象と方法】
対象は2010年から2023年にCRS±HIPECを施行した70例.虫垂癌は含み,腹膜偽粘液腫と腹膜以外の遠隔転移を有する症例は除外した.CRS単独群(13例)とCRS+HIPEC群(57例)に分け,短期成績を後ろ向きに比較検討を行った.
【結果】
患者背景は,性別,年齢,原発(虫垂・右側・左側),組織型,ASA-PS,腫瘍マーカー値,およびPCI score(両群とも中央値7/39)で有意差はなかった.手術所見は,遺残スコア(CC-score),出血量に有意差はなかった.手術時間,挿管期間,ICU在室期間は,CRS+HIPEC群の方が有意に長かったが,術後在院日数に有意差を認めなかった.Grade III以上(Clavien-Dindo分類)の術後合併症はCRS+HIPEC群は12%であったが,CRS単独群は0%であった.術死はともに認めず.CRS単独群の観察期間はまだ短いため長期予後に比較は難しいが,1年Disease-free-survivalはCRS+HIPEC群の方が良好である傾向が見られた(CRS+HIPEC群:56%,CRS単独群:38%,P=0.08).また,CRS+HIPEC群の5年Overall survivalは44%,Disease-free-survivalは26%と比較的良好であった.
【結語】
大腸癌腹膜転移に対するCRS単独による治療は,HIPEC併用した場合と比較し,術後合併症は少ない傾向にあったが,Disease-free-survivalは不良である可能性が示唆された.CRS単独群のさらなる症例数の蓄積と長期予後の検討が必要である.一方で,HIPEC併用群の術後合併症と長期成績は妥当であると考えられ,HIPECの併用が望ましいと考える.