講演情報

[SY1-8]クローン病に合併した直腸肛門管癌の臨床学的特徴

堀尾 勇規1, 内野 基1, 友尾 祐介1, 野村 和徳1, 長野 健太郎1, 楠 蔵人1, 桑原 隆一1, 木村 慶2, 片岡 幸三2, 別府 直仁2, 池田 正孝2, 池内 浩基1 (1.兵庫医科大学病院消化器外科学講座炎症性腸疾患外科, 2.兵庫医科大学病院消化器外科学講座下部消化管外科)
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【目的】クローン病(CD)に合併する痔瘻癌を含めた直腸肛門部癌は,診断困難で予後不良にもかかわらず,サーベイランス法や治療ストラテジーが確立されていないことが問題となっている.
 【対象】2000年1月から2023年12月までに当院でCDに合併した直腸肛門部癌と診断された症例を対象とし,その臨床学的所見,治療,予後について検討した.
 【結果】CDに合併した直腸肛門部癌は56例であった.男性43例(77%),女性13例(23%)であり,癌診断時年齢は,中央値47歳(28-74歳)で,病悩期間は中央値22年(1-43年)であった.術前に診断し得た症例は37例(66%)であり,そのうち内視鏡での診断が26例,経肛門生検が11例,MRIが1例であった.癌診断時から遡って1年前の内視鏡施行例は11例(20%),経肛門生検は6例(11%)のみであった.stage 0が2例(4%),stage 1は7例(13%),stage 2は24例(44%),stage 3は14例(25%),stage 4は7例(13%),不詳が2例(4%)であった.術前化学放射線療法(CRT)は7例に,術前化学療法は2例に施行され,それぞれCR1例,PR2例,SD4例,PD1例で,SD1例,PD1例であり,6/9例(66%)は術前治療の効果を認めなかった.術式は,腹会陰式直腸切断術が41例(73%),骨盤内臓全摘術が7例(13%),人工肛門造設のみが3例(5%),超低位前方切除術が1例(2%),経肛門切除が1例(2%)であり,CurA:41例(73%),CurB:7例(13%),CurC:8例(14%)であった.CRとPR症例は,CurA:1例,CurB:2例であったが,3例とも再発し癌死となっており,SD症例は1例手術不能で,3例がCurAであったが再発認め癌死している.PD症例は骨盤内臓全摘術を施行し,無再発生存を認めているが観察期間は6か月である.術後補助化学療法は25例に行なわれていたが,17例に再発を認め15例が癌死となった.無再発生存症例は20例(35%)で,全例stage0-2であり,1例を除き術前診断がなされていた.観察期間の中央値は37か月(2-231か月)であり,5年生存率は47%であった.
 【結語】CDに合併した痔瘻癌は,癌診断時から遡って1年前に癌サーベイランスを施行していた症例が少なかった.また術前化学放射線療法の効果は限定的である可能性があり,予後改善には早期診断が重要である.