講演情報

[P12-1-1]80歳以上の高齢者大腸癌に対する大腸切除術の検討

穂坂 美樹, 若林 正和, 嶋田 和晃, 山下 愛矢, 近江 将貴, 杉原 黎, 加瀬 匠磨, 松尾 聖哉, 新立 正貴, 小堀 秀一, 吉田 隼人, 木村 友洋, 堂本 佳典, 牛久 秀樹, 相崎 一雄, 船津 健太郎 (相模原協同病院)
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【背景】
 近年,高齢者に対する大腸切除術が増加してきており,当院でも耐術能があれば,施行している.
 【目的】
 80歳以上高齢者の大腸癌に対する大腸切除術の安全性を検討した.
 【期間・対象】
 2021年1月から2023年12月に当院で行った大腸癌に対する大腸切除術367例のうち,80歳以上の74例を対象とした.
 【方法】
 発症した合併症をClavien-Dindo(CD)分類III以上群とIII未満群に分けて合併症の危険因子を検討した.重複癌や同時手術を行った症例は除外した.
 検討項目:患者背景,術前治療・処置,術前血液検査,病理学的所見や手術成績について検討した.
 【結果】
 CD分類III以上を9例に認め,内訳は麻痺性イレウス 2例,Outlet Obstruction 1例,縫合不全 3例,遅発性腸管壊死 1例,人工肛門部位穿孔 1例,呼吸不全 1例であった.
 腫瘍局在(結腸vs直腸)で有意差(p=0.03)を認め,直腸癌が危険因子として挙げられた.
 術後在院日数で有意差(p=0.007)を認め,CDIII以上で大幅な術後在院日数の延長を認めた.
 他は有意差を認めなかった.
 【考察】
 今回の検討では直腸癌症例のみが合併症の危険因子であり,他の要因は危険因子とはならなかった.直腸癌の場合,縫合不全などの合併症のリスクが高く,早期自宅退院をめざすために一時的人工肛門造設やHartmann手術なども検討が必要と考えられた.しかし,合併症の有無だけに限らず,高齢者の場合は手術を契機にADLの低下を認めてしまうことも問題となる.実際に当院の症例では自宅退院ができずに転院や通院不可能となってしまった症例はCD分類III以上で3例(33.3%),CD分類III未満で6例(9.2%)と頻度が高かった.今後は術前筋肉量評価などADL評価項目も検討していきたい.
 【結語】
 今回,我々は80歳以上高齢者の大腸癌に対する大腸切除術の検討を行った.