講演情報

[O8-6]ロボット支援結腸切除における体腔内オーバーラップ吻合の定型化と治療成績

近藤 彰宏, 馮 東萍, 竹谷 洋, 松川 浩之, 西浦 文平, 安藤 恭久, 須藤 広誠, 岸野 貴賢, 大島 稔, 隈元 謙介, 岡野 圭一 (香川大学医学部消化器外科)
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【背景】結腸体腔内吻合は手技の困難性が示唆されるものの,優れた操作性を有するロボット支援手術の利点が最大限に発揮される可能性がある.当科ではロボット支援結腸癌手術導入に伴って体腔内吻合も同時に導入し,腸閉塞症例以外は全例適応としている.一方でロボット支援手術においても体腔内吻合に伴うデメリット(腸管内容や腫瘍細胞の漏出)への配慮は不可欠である.本発表ではロボット支援結腸切除術における当科の定型化した体腔内オーバーラップ吻合手技と治療成績について述べる.
 【手術手技】全例で機械的・化学的前処置を行う.吻合前に腸管血流評価を実施し血流が良好であることを確認する.肛門側腸管は断端から8cm,口側腸管は断端から2cmの部位に小孔をあけ,側々吻合を行う.腸管開放時は必ず底面にガーゼを敷き便汁散布を防ぐ.3本のロボット鉗子を最大限に活用して腸管の操作を行い,腹腔鏡用自動縫合器を用いて腸管切離及び吻合を行う.また腸管の愛護的な取り回しや確実な止血を目的として切離吻合時には補強材付き自動縫合器を使用する.エントリーホールはロボットの多関節機能を活用してバーブドスーチャーで縫合閉鎖を行う.腸内細菌汚染及び腫瘍細胞散布のリスクを考慮し生食3000mlで洗浄しドレーンを留置する.
 【対象・方法】2022年6月から2024年3月までに体腔内吻合を伴うロボット支援結腸癌手術を施行した27例の治療成績を検討した.
 【結果】年齢(中央値):68歳,男性/女性:14/13例,BMI(中央値):23.4,腫瘍占拠部位はC/A/T/D:10/12/4/1例.手術時間(中央値):319分,再建時間(中央値):35分,出血量(中央値):0ml.GradeII以上の術後合併症発生:4例(15%),術後在院日数(中央値):10日.切離腸管長はPM,DMともに全例10cm以上確保できていた.pStageはI/II/III/IV:10/7/9/1例,観察期間は短いものの現在まで腹膜播種再発は認めていない.
 【結語】体腔内吻合に伴う潜在的なデメリットを認識して対策を講じるとともに手術支援ロボットの特性を最大限に活用することで,ロボット支援結腸癌手術における体腔内吻合は安全に導入可能であった.今後は症例を集積しつつ工夫を重ね,長期成績の検討が必要である.