講演情報

[P18-1-6]他臓器浸潤を伴う壁外発育型盲腸癌に対して根治手術を施行し得た一例

兼定 航, 岩藤 真生, 近藤 潤也, 爲佐 卓夫 (宇部興産中央病院外科)
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【症例】56歳,女性.半年前から認める間欠的な右下腹部痛を主訴に近医を受診し,右下腹部の腫瘤触知および血液検査で炎症反応の上昇を認め,精査目的に当科紹介となった.血液検査では軽度の炎症反応上昇を認めるが,腫瘍マーカーCEA 36.4 ng/mlと上昇認めていた.CT検査およびMRI検査にて右下腹部に最大径91mmの不整形腫瘤を認め,腸閉塞所見はなく,終末回腸,右付属器および上部直腸への浸潤を呈していた.下部消化管内視鏡検査では虫垂開口部に位置する盲腸に腫瘍性病変を認め,生検でGroup5,tub2が検出された.盲腸癌または虫垂癌の術前診断のもと手術加療の方針となった.術前画像にて浸潤はないが,腫瘍近傍に右尿管が走行していたため,術前尿管ステントを留置しておいた.まず腹腔鏡下で腹腔内観察すると,右下腹部に周囲組織と一塊となった腫瘍を認め,P3播種ないことを確認し開腹とした.開腹所見では終末回腸は腫瘍に巻き込まれ,右下腹部腹壁への一部浸潤,右卵巣および上部直腸への浸潤を認めた.腹壁,右付属器,上部直腸を合併切除し,腫瘍背側では術前画像通りに右尿管と近接はしていたが剥離は可能であった.中枢側D3郭清を行い,巻き込まれた終末回腸を含めての回盲部切除にて標本摘出した.摘出標本では盲腸に潰瘍性の腫瘍を認め,壁外発育が主体であった.病理組織診断では虫垂組織の同定は困難なことから盲腸癌と診断され,回腸,右付属器,直腸への浸潤を認め,尿管との剥離部含めて外科的剥離面は陰性であった.#201にリンパ節転移を認め,現在術後補助療法としてCAPOX療法6ヶ月施行中である.
 【考察】壁外発育型大腸癌の場合は内腔への腫瘍の発育が乏しく,腸閉塞症状は少なく本症例の如く腫瘍が巨大化して診断される症例が散見される.予後については観察期間が短い報告が多く明確ではないが,遠隔転移を伴わない場合には比較的長期の生存もみられることから切除可能な場合は積極的な根治手術が望まれる.
 【結語】他臓器浸潤を伴う壁外発育型盲腸癌に対して他臓器合併切除を併施することで根治手術を施行し得た一例を経験した.