講演情報

[PD9-9]当院におけるクローン病合併痔瘻に対する脂肪由来間葉系幹細胞製剤治療の半年後成績

三枝 直人1,2, 堀田 直樹3, 三枝 純一2 (1.増子記念病院IBDセンター, 2.三枝クリニック・肛門科, 3.増子記念病院消化器肝臓内科)
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[目的]クローン病(CD)では痔瘻の合併頻度が高いが,瘻管切開による根治術は括約筋機能障害リスクがあり,生物製剤(Bio)投与下に長期のdrainage setonを余儀なくされる.CDにともなう難治性痔瘻に対して2021年11月に日本初の脂肪由来間葉系幹細胞製剤(Darvadstrocel)が登場したが,当院での成績を検討した.[対象・方法]2023年9月までに当院でDarvadstrocelを施術された4例は全例自然肛門温存例で,膣瘻・肛門狭窄・悪性疾患既往は含まれない.投与3-4週間前に麻酔下に原発口や瘻管形状の確認,瘻管内掻爬/生検/ドレナージを行った.治療評価は,Darvadstrocel投与時から6か月以内に発生した有害事象,用指圧迫による排膿および二次口の閉鎖の有無および,投与前後で以下の評価尺度を調査した.1)Crohn's disease activity index(CDAI),2)Perianal Crohn's Disease Activity Index(PDAI),3)Harvey-Bradshaw index(HBI),4)EuroQol VisualAanalogue Scale(VAS),5)Crohn's Anal Fistula Quality of Life(CAF-QoL)の5つの尺度である.なお,本研究は増子記念病院倫理審査委員会の承諾を得て施行された(承認番号MR5-8).
 [結果]患者背景を以下の表に示す.
 症例 性 年齢 痔瘻 CD 大腸 一次 二次 肛門手術 SES 併用 術前
   期間 期間 病変 口数 口数 回数 -CD Bio seton
 #1 男 40歳 13年 11年 あり 1 2 5 5 IFX 2本
 #2 男 25歳 15年 10年 あり 1 1 4 0 IFX 1本
 #3 女 49歳 20年 17年 あり 1 2 3 3 UST 2本
 #4 女 46歳 19年 23年 あり 1 2 3 7 ADA 1本
 痔瘻の転帰および上記3指標の数値を以下の表に示す.
 症例 麻酔法 手術 排膿 二次口 CDAI PDAI HBI VAS CAF-QoL
 時間    前-後 前-後 前-後 前-後 前-後
#1 仙骨 67分 あり 開存 42-23 7-6 2-6 70-80 57-20
#2 仙骨 51分 なし 閉鎖 87-79 5-5 2-0 85-70 45-2
 #3 仙骨 38分 なし 開存 35-24 11-6 0-0 75-91 39-10
 #4 脊髄 42分 あり 開存 108-54 6-7 1-0 95-80 48-52
全例において,投与時に腸管病変は寛解であり,また特記すべき有害事象は認められなかった.[結論]中期的にDarvadstrocel投与は安全で主観的なQOLの改善も一定程度みられたが,瘻孔の閉鎖は1例にとどまった.今後,投与前処置や併用分子標的薬の選択,一次口の処理法などを工夫し費用対効果を向上させるとともにさらに症例を重ね長期的に評価する必要がある.