講演情報

[VSY1-6]横行結腸癌手術に対してAI・Mixed realityで支援する術前術中の解剖認識と,Triangulation理論・超音波凝固切開装置を利用した授動と郭清

柳 舜仁1, 今泉 佑太1, 中嶋 俊介1, 川窪 陽向1, 河合 裕成2, 小林 毅大1, 伊藤 隆介1, 中林 幸夫1, 衛藤 謙2 (1.川口市立医療センター, 2.東京慈恵会医科大学外科学講座)
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緒言:当院ではD3郭清を行う横行結腸癌に対し,SYNAPSE VINCENTとHoloeyes MDを用いて各症例のCTから臓器や血管走行の3Dホログラムを作成,透過型VRグラス(Hololens2)を装着して術前・術中にMixed reality(MR)で観察し,特にSMA・SMV周囲の血管解剖を把握する取り組みを行っている.また横行結腸部分切除(TC)・右半切除(RHC)・左半切除(LHC)のいずれにおいても,頭側アプローチを基本としている.特に副右結腸静脈の安全な処理は,結腸肝彎曲を十分に先行授動する事が肝要で,助手の展開は右胃大網動静脈のpedicleから十二指腸,肝結腸靭帯,横行結腸へとTriangulationを移しながらこれを行う.リンパ節郭清は頭尾側から挟み撃ちで行い,超音波凝固切開装置(LCS)で血管周囲の疎性結合組織やリンパ管をシーリングしながら切離する.特にSMA周囲はoutermost layerを認識した郭清が重要と考えている.
方法:当院の定型化をSurgical AI 【Eureka】による解析(神経・疎性結合組織の強調表示)とMR映像と共に供覧.また横行結腸癌手術(2017年1月-2024年2月,n=57,進行癌に対しD3以上の郭清を行った症例に限る.他臓器同時手術を除く)をMR使用群と非使用群とにわけ,短期成績を検討.
結果(中央値と四分位範囲値):
使用群:非使用群の比較において年齢(歳);72(64-78)vs 74(62-77)(p=0.8730),男女比(n);7:9 vs 24:17(p=0.3139),BMI(kg/m2);22.7(19.4-25.7)vs 22.8(19.9-23.8)(p=0.7224),腹腔鏡手術率(%);100 vs 78.1(p=0.0495),術式(RHC:LHC:TC);7:5:4 vs 31:7:3(p=0.0555),手術時間(分);307.5(246.5-364.5)vs 323(234.5-394.5)(p=0.9151),出血;3(1.25-8.75)vs 20(4-55)(p=0.0017),術後在院日数;8(8-10)vs 9(8-11)(p=0.1531),術後合併症(例,CD分類3以上);2(12.5%;縫合不全1,腹腔内膿瘍1)vs 2(4.88%,縫合不全2)(p=0.3118)であった.
結論:Eurekaによる解析は,疎性結合組織に加えてoutermost layerの神経線維を強調表示可能である.MRによる解剖把握は腹腔鏡手術率向上や出血量低減に貢献できる可能性がある.ただし当院の手術時間は長い傾向にあり,テクノロジーの臨床活用と共に,手術の本質部分のブラッシュアップが必要と考える.