講演情報
[R17-5]女性の浅会陰横筋経路痔瘻に対する低侵襲な手術手技
荒引 みちる1, 小林 孝2, 八木 寛2, 渡邊 隆興2 (1.新潟県立がんセンター新潟病院消化器外科, 2.新潟臨港病院外科)
【はじめに】近年,女性の会陰筋群の構造に関して臨床解剖学に基づいた新しい知見が報告されている.これまでの教科書とは異なり,女性の浅会陰横筋は浅外肛門括約筋の両側で前側方に合流し,その筋線維を共有することが明らかになった.この会陰筋群の構造に対する理解が男性と異なり女性に前側方痔瘻が多いことを解明する鍵となる.女性の前方に生じた筋間膿瘍が前側方で浅外肛門括約筋に合流している浅会陰横筋内をその筋束に従って進展し,筋肉を穿破して前側方に瘻管・二次口を形成して浅会陰横筋経路痔瘻となる.
浅会陰横筋を確実に温存することは,排便機能の温存,膣・肛門の変形の回避につながる.女性の真の肛門括約筋の構造を理解した手術でなければ,括約筋温存手術ではないと考えるため,我々が行っている低侵襲な浅会陰横筋経路痔瘻の手術手技を報告する.
【対象】当科で,浅会陰横筋の走行を意識した手術を開始した2012年1月から2022年12月までに手術を施行した女性痔瘻は91例で,前側方の原発口由来は36例,浅会陰横筋経路が11例であった.
【手術方法】①術前にMRI検査を行い,浅会陰横筋経路痔瘻であることを確認する,②浅会陰横筋の直上で約25mmの皮膚切開をおく,③浅会陰横筋と筋束に沿って走行する瘻管を同定する,④浅会陰横筋を筋束に沿って鈍的に剥離して瘻管を露出する,⑤瘻管を切開して内腔を確認した後,瘻管切開部から原発口に細い鉗子を挿入する,⑥瘻管切開部から原発口にゴム輪を通す,⑦瘻管切開部から遠位の瘻管と二次口は切除する,⑧瘻管切除部より遠位の皮膚は縫合閉鎖する.
【成績】追跡可能であった浅会陰横筋経路痔瘻の術後患者11名へのアンケートの結果,5名の回答を得た.FISIスコア3点(月に1-3回)の粘液失禁を2名に認めた.便失禁の症状を呈する症例,および再発は認めなかった.
【結語】前側方痔瘻に対する手術は,施設あるいは術者の選択により様々なアプローチが試みられている.しかしながら,女性の前側方痔瘻に対しては,通常の低位筋間痔瘻よりやや深めの,浅外肛門括約筋とそれに合流する浅会陰横筋を瘻管が走行する痔瘻が存在することを念頭に置いて手術を施行することが重要である.
浅会陰横筋を確実に温存することは,排便機能の温存,膣・肛門の変形の回避につながる.女性の真の肛門括約筋の構造を理解した手術でなければ,括約筋温存手術ではないと考えるため,我々が行っている低侵襲な浅会陰横筋経路痔瘻の手術手技を報告する.
【対象】当科で,浅会陰横筋の走行を意識した手術を開始した2012年1月から2022年12月までに手術を施行した女性痔瘻は91例で,前側方の原発口由来は36例,浅会陰横筋経路が11例であった.
【手術方法】①術前にMRI検査を行い,浅会陰横筋経路痔瘻であることを確認する,②浅会陰横筋の直上で約25mmの皮膚切開をおく,③浅会陰横筋と筋束に沿って走行する瘻管を同定する,④浅会陰横筋を筋束に沿って鈍的に剥離して瘻管を露出する,⑤瘻管を切開して内腔を確認した後,瘻管切開部から原発口に細い鉗子を挿入する,⑥瘻管切開部から原発口にゴム輪を通す,⑦瘻管切開部から遠位の瘻管と二次口は切除する,⑧瘻管切除部より遠位の皮膚は縫合閉鎖する.
【成績】追跡可能であった浅会陰横筋経路痔瘻の術後患者11名へのアンケートの結果,5名の回答を得た.FISIスコア3点(月に1-3回)の粘液失禁を2名に認めた.便失禁の症状を呈する症例,および再発は認めなかった.
【結語】前側方痔瘻に対する手術は,施設あるいは術者の選択により様々なアプローチが試みられている.しかしながら,女性の前側方痔瘻に対しては,通常の低位筋間痔瘻よりやや深めの,浅外肛門括約筋とそれに合流する浅会陰横筋を瘻管が走行する痔瘻が存在することを念頭に置いて手術を施行することが重要である.