講演情報

[R3-4]当科で施行した腹腔鏡手術における蛍光尿管ナビゲーションの有用性について

土谷 祐樹, 仲川 裕喜, 安藤 祐二, 村井 勇太, 幸地 彩貴, 十朱 美幸, 髙橋 宏光, 入江 宇大, 百瀨 裕隆, 雨宮 浩太, 茂木 俊介, 塚本 亮一, 本庄 薫平, 髙橋 里奈, 盧 尚志, 河合 雅也, 石山 隼, 杉本 起一, 冨木 裕一, 坂本 一博 (順天堂大学下部消化管外科)
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【はじめに】尿管損傷は,骨盤手術の最も一般的な泌尿器科合併症であり,発症率は0.24-1.95%と報告されている.術前尿管ステント留置を尿管損傷の危険のある症例に挿入する方法は,これまでも一般的に行われてきたが,尿管損傷を予防するエビデンスを得るまでには至っていない.また,腹腔鏡下手術では,触覚に頼ることができないため,従来の尿管ステントでは,触知して確認できないため有用性は限定的である.インドシアニングリーン(ICG)は,血流の評価やリンパ流の可視化に用いられている.新たに開発された近赤外線蛍光樹脂もICGと同様に近赤外蛍光を発する.蛍光尿管ステント(NIRC™)は,この近赤外線蛍光樹脂を内蔵した新しい尿管ステントがある.今回当科で試行した腹腔鏡手術における蛍光尿管ステントの有用性について検討した.
【対象】2023年1月から2024年3月までに当科で施行した腹腔鏡手術において蛍光尿管ステントを挿入した13例.疾患は,大腸癌3例,大腸憩室炎4例,炎症性腸疾患3例,膿瘍形成性虫垂炎1例,腹腔内腫瘤1例,仙骨前面巨大多発嚢胞1例であった.全例で手術当日に全身麻酔後に泌尿器医師により透視下で蛍光尿管ステントを留置し,術中に遠赤外線光観察器で尿管の観察を行った.
【結果】全例で尿管ステントが留置され,右尿管が6例,左尿管が6例,左右尿管が1例であった.留置時間は18分(6-25分)であった.術中の尿管損傷は認めなかった.全例で蛍光が,明瞭に描出され,リアルタイムに尿管を同定することができた.また,蛍光尿管ステント留置による合併症は認めなかった.
【まとめ】術前に尿管損傷を危惧する症例において,蛍光尿管ステントは,腹腔鏡下手術で術中に尿管の位置を把握するために有用であると考えられる.蛍光尿管ステントの使用報告はまだ少なく,さらなる症例を蓄積し,検討していきたい.