講演情報

[R19-1]当院における脊髄損傷患者の痔核に対する治療成績

米本 昇平, 岡本 康介, 黒水 丈次, 宮島 伸宜, 國場 幸均, 下島 裕寛, 宋 江楓, 河野 洋一, 松村 奈緒美, 彦坂 吉興, 紅谷 鮎美, 小菅 経子, 鈴木 佳透, 松島 小百合, 酒井 悠, 佐井 佳世, 松島 誠 (松島病院大腸肛門病センター)
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【背景】脊髄損傷(以下脊損とする)患者は概ね排便時間が長く,痔核手術による術後出血などのリスクが高いことが予想されるが,脊損患者の痔核の治療方針について言及する報告はほとんどない.
【目的】当院での脊損患者に対する痔核治療の現状を報告する.
【方法】2020年12月から2024年4月までに,脊損の既往があり,痔核による症状を主訴に当院へ来院された患者は17例であった.そのうち脊損が関連する排便障害を有する12例に対して後方視的検討を行った.
【結果】男性11例(92%),女性1例(8%),年齢中央値55歳(36~87),ADLは自立1例(8%),杖や装具4例(33%),車椅子 7例(58%)であった.排尿障害がある者は6例(50%),便意がない者は7例(58%),排便に下剤や摘便を要する者が10例(83%)であった.排便時間中央値は30分(3~180),排便間隔3日以上は5例(42%),BSスコア1~2が2例(17%),3~5が9例(75%),6~7が1例(8%),Goligher分類では2,3度が9例(75%),4度が3例(25%)であった.治療方針では,軟膏等での経過観察が8例(67%),PAOのみ行った者が2例(17%),最終的に手術に至った者が2例(17%)であった.手術例を提示する.1例は60歳男性で,ADLは車椅子,排便頻度は1~2回/日で時間を決めて下剤を内服し10分程度の自力排便であった.LE+MuRAL法を施行したが,下剤調整も術後3日目まで排便がなく,6日目に4時方向の痔核根部より出血があり止血処置を要した.1例は55歳男性で,ADLは車椅子,排便頻度は3回/週で曜日を決めて下剤を使用,60~120分の排便時間を要していた.排便時間の短縮を指導,出血制御でPAOを行うも,その後も出血を繰り返し,ALTA併用療法(E3・A)を施行した.軽度の創離開があったものの概ね経過良好であった.
【考察】当院では痔核患者に対して術前から入念な排便指導を行っているが,脊損患者では手術に至らずに経過観察となった症例が多く存在した.また脊損患者に対しては通常行う痔核根部までのLEは行わず,ALTA併用療法といった侵襲性を考慮した治療も選択肢となる可能性がある.
【まとめ】脊損患者の痔核手術で,術後出血などの合併症を減らすためには,術前からの入念な排便管理と手術方法の検討が必要である.