講演情報
[PD5-6]大腸T1癌における術後再発例の検討
藤原 敬久1, 南出 竜典2, 稲場 淳1, 新村 健介1, 伊藤 雅昭3, 池松 弘朗2 (1.国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科, 2.東京大学医科学研究所付属病院消化器内科, 3.国立がん研究センター東病院大腸外科)
【目的】大腸T1癌のリンパ節転移割合は約10%であり,リンパ節転移リスク因子を認める病変はリンパ節郭清を伴う外科手術が標準治療である.しかし,術後局所・遠隔転移再発を一定の頻度で認めるが,その臨床病理学的特徴や予後に関する検討は少ない.【方法】2010年9月から2020年12月に国立がん研究センター東病院にて,初回または内視鏡的切除後追加手術を含めリンパ節郭清を伴う外科手術を受け,病理診断にてpT1癌と診断された症例を対象とした.Lynch症候群,家族性大腸腺腫症,潰瘍性大腸炎,pT1以深の大腸癌の既往,同時性pT1以深の大腸癌,診断日から過去5年以内にStageII以上の他臓器癌既往は除外した.評価項目は,対象症例における再発割合,再発症例の臨床病理学的特徴,転帰とし,後方視的に評価した.【結果】対象は439例であり,観察期間中央値63か月,年齢中央値66歳(範囲24-88歳),男性155例/女性284例,結腸269例/直腸170例,内視鏡切除+外科手術111例/外科手術単独328例で,同時性リンパ節転移割合は11%(49例)であった.再発割合は2.3%(10例)で,すべて遠隔転移再発であり,再発までの期間中央値20か月(範囲4-50か月)であった.再発例の臨床病理学的特徴(年齢,性別,治療法別,部位,肉眼型,大きさ,主組織型,浸潤距離,リンパ管侵襲,静脈侵襲,簇出,同時性リンパ節転移)を非再発例と比較すると,直腸癌,静脈侵襲陽性,同時性リンパ節転移陽性例で再発が多い傾向にあったが有意差はなかった.再発した10例はすべて深達度T1b癌であったが,3例は他のリンパ節転移リスク因子をいずれも認めなかった.また,同時性リンパ節転移陰性症例でも7例(1.8%)に再発を認めた.転帰は,10例中3例(30%)が原病死であった.【結論】当院における大腸T1癌の術後再発割合は2.3%で,直腸癌,静脈侵襲陽性,同時性リンパ節転移陽性例で再発が多い傾向であった.浸潤距離以外のリンパ節転移リスク因子陰性例や同時性リンパ節転移陰性例でも頻度は少ないが再発を認めた.