講演情報
[P18-1-3]腸閉塞をきたした虫垂・小腸瘻の1例
加藤 雅也, 笹生 和宏, 小森 孝通, 麻本 翔子, 内山 優史, 水野 剛志, 大久保 聡, 住本 知子, 遠矢 圭介, 橋本 和彦, 岸 健太郎, 福永 睦 (兵庫県立西宮病院消化器外科)
【症例】50歳代,女性.【現病歴】発熱・腹痛・嘔吐を主訴に救急外来を受診した.血液検査で炎症反応の上昇を認め,腹部造影CT検査で虫垂は腫大しており,内部に糞石を伴っていた.また,小腸は明らかな閉塞機転はないものの,広範囲に腸管の拡張を認めた.急性虫垂炎およびそれに伴う麻痺性イレウスと診断され,同日入院となった.interval appendctomyの方針で保存的加療が行われた.加療を開始してから15日後に症状は軽快し退院した.外来で待機的に手術の予定であったが,手術予定の数週間前に腹痛が再燃し,外来受診した.血液検査で炎症反応の上昇は認めず,腹部造影CT検査で小腸の拡張と,虫垂と近傍の小腸での連続性を認めた.前回入院時に認めた,糞石は消失していた.【入院後経過】虫垂炎後の癒着性腸閉塞と診断し,絶食の上,イレウス管を留置し保存的加療を選択した.しかし,症状の改善はなく,イレウス管造影検査で造影剤の通過不良を認めたため,保存的加療は困難と判断し,手術を行う方針となった.【手術所見】腹腔鏡下にて手術を開始した.腹腔内で小腸の癒着は認めず,虫垂の炎症所見は目立たなかったが,虫垂と小腸が癒合している状態であった.虫垂・小腸瘻を疑い,腹腔鏡下虫垂切除術および小腸部分切除術を施行した.手術時間は117分,出血量は15ml.【術後経過】術後3日目に食事を開始し,11日目に合併症なく退院された.【病理所見】虫垂と小腸に瘻孔を認め,虫垂・小腸瘻の診断であった.【考察】瘻孔とは,異なる臓器間または皮膚との間に交通路をきたした状態である.医学中央雑誌にて「虫垂瘻」「腸管」で検索したところ,1990年から2017年の範囲で虫垂・腸管瘻は18例の報告があった.18例のうち,16例が虫垂・S状結腸瘻,2例が虫垂・直腸瘻であった.原因としては虫垂炎からのものが大半であった.しかし,虫垂炎から小腸に瘻孔をきたした症例は,本邦では報告されていない.【結語】虫垂・小腸瘻はまれな疾患であるが,虫垂炎の術前には,瘻孔形成をきたしている可能性を考慮しておく必要がある.