講演情報
[O17-1]回腸人工肛門に伴う合併症の発生状況
島田 麻里1,2, 齋藤 裕人2, 辻 敏克2, 山本 大輔2, 森山 秀樹2, 木下 淳2, 稲木 紀幸2 (1.福井県立病院外科, 2.金沢大学附属病院消化管外科)
【はじめに】回腸人工肛門ではhigh-output stomaやoutlet obstructionなど特有の合併症が起こることが知られており,我々が経験した合併症について報告する.【対象と方法】金沢大学附属病院で2020年4月から2023年12月に回腸人工肛門を造設した67例を後方視的に検討した.【結果】造設目的は直腸癌手術時のdiverting ileostomy40例(59.7%),待機的大腸全摘術時のdiverting ileostomy9例(13.4%),緊急手術11例(16.4%),その他7例(10.4%)であった.男性49例,女性18例,年齢58(16~89)歳であった.双孔式57例,単孔式9例,2連銃1例で,人工肛門閉鎖率は47例(70.1%)であった.人工肛門関連合併症はoutlet obstruction9例(13.4%),high-output stoma25例(37.3%),腎機能障害22例(32.8%),電解質異常2例(3.0%),人工肛門壊死1例(1.5%),腸管皮膚瘻1例(1.5%),壊疽性膿皮症1例(1.5%)であった.outlet obstructionは7例はチューブ挿入のみで軽快したが,2例は軽快せず早期閉鎖を要した.outlet obstructionを認めた群は,有意に若年であった(44歳 vs 60歳,p=0.037).high-output stomaは1日1500mlを超える排液とし,止痢剤追加を要した症例は25例中13例であった.腎機能障害・電解質異常は入院中もしくは退院後に発生し,腎機能障害を認めた群では有意に高齢(62歳 vs 53歳,p=0.026),high-output stomaあり(58.3% vs 37.5%,p=0.003),術前eGFRが低い(68.2 vs 80.3ml/min/1.73m2)結果であった.【結語】回腸人工肛門に特有の合併症は比較的高頻度に発生し,腸閉塞や脱水など患者状態に大きく影響を与える.特にリスクの高い症例では合併症の発生を念頭におき,適切に対応するよう注意が必要である.