講演情報
[R9-2]予防的側方リンパ節郭清施行症例における側方リンパ節転移に関連する因子について
森 千浩, 山岡 雄祐, 塩見 明生, 賀川 弘康, 眞部 祥一, 田中 佑典, 笠井 俊輔, 井垣 尊弘, 額田 卓, 島野 瑠美, 髙嶋 祐助, 坂井 義博, 石黒 哲史, 谷田部 悠介, 辻尾 元, 横山 希生人, 八尾 健太 (静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
【背景】大腸癌治療ガイドラインでは腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側でcT3以深の直腸癌には側方郭清が推奨されている.側方リンパ節転移の診断基準は確立されておらず,現時点では側方郭清を省略できる症例の基準は明らかでない.
【目的】cT3以深の下部直腸癌の予防的側方郭清施行症例における側方リンパ節転移に関連する臨床病理学的因子を明らかにする.
【対象と方法】2010年4月から2018年12月までにcT3以深の原発性下部直腸癌に対して予防的両側側方郭清を施行した症例を対象とした.術前側方リンパ節転移陽性(術前MRI検査で最大短径6mm以上,最大短径6mm未満で辺縁不正あるいは類円形)の症例 は除外した.術前MRI検査で腫瘍下縁から肛門縁までの距離(mrAV,cm),EMVI score(0-2点:mrEMVI-,3-4点:mrEMVI+),側方リンパ節の最大短径(mrLLNmax,mm)を測定した.多変量解析で側方リンパ節転移と有意に関連する臨床病理学的所見を同定した.
【結果】対象症例は182例.年齢中央値は62歳,男性/女性=50/132例,術前CEA中央値4.55ng/ml,mrAV中央値4.14cm,cT3/4=157/25例,cN0/1/2=62/63/57例,mrEMVI-/+=85/97例,mrLLNmax中央値4.54mm.アプローチ法は開腹/腹腔鏡/ロボット=49/16/117例.pT1/2/3/4=0/45/113/24例,pN0/1/2=89/54/39例.側方リンパ節転移陽性は14例(7.7%),リンパ管侵襲陽性95例.静脈侵襲陽性141例,R1切除となった症例は2例(1.1%).術後補助化学療法を施行した症例は81例.多変量解析でmrEMVI+とmrLLNmax>5mmが側方リンパ節転移陽性と有意な関連を示した.再発を51例(28%)に認め,側方リンパ節に再発を認めた症例は4例(2.2%)であった(観察期間中央値66.3か月).mrEMVI-かつmrLLNmax≦5mmの症例は60例であり,全例で側方リンパ節転移陰性であり,側方リンパ節に再発を来した症例は認めなかった.
【結語】術前MRI検査でEMVI陽性,側方リンパ節の最大短径>5mmは有意に側方リンパ節転移陽性と関連していた.予防的側方郭清の省略を検討する場合にはそれらの所見に留意する必要があると思われる.
【目的】cT3以深の下部直腸癌の予防的側方郭清施行症例における側方リンパ節転移に関連する臨床病理学的因子を明らかにする.
【対象と方法】2010年4月から2018年12月までにcT3以深の原発性下部直腸癌に対して予防的両側側方郭清を施行した症例を対象とした.術前側方リンパ節転移陽性(術前MRI検査で最大短径6mm以上,最大短径6mm未満で辺縁不正あるいは類円形)の症例 は除外した.術前MRI検査で腫瘍下縁から肛門縁までの距離(mrAV,cm),EMVI score(0-2点:mrEMVI-,3-4点:mrEMVI+),側方リンパ節の最大短径(mrLLNmax,mm)を測定した.多変量解析で側方リンパ節転移と有意に関連する臨床病理学的所見を同定した.
【結果】対象症例は182例.年齢中央値は62歳,男性/女性=50/132例,術前CEA中央値4.55ng/ml,mrAV中央値4.14cm,cT3/4=157/25例,cN0/1/2=62/63/57例,mrEMVI-/+=85/97例,mrLLNmax中央値4.54mm.アプローチ法は開腹/腹腔鏡/ロボット=49/16/117例.pT1/2/3/4=0/45/113/24例,pN0/1/2=89/54/39例.側方リンパ節転移陽性は14例(7.7%),リンパ管侵襲陽性95例.静脈侵襲陽性141例,R1切除となった症例は2例(1.1%).術後補助化学療法を施行した症例は81例.多変量解析でmrEMVI+とmrLLNmax>5mmが側方リンパ節転移陽性と有意な関連を示した.再発を51例(28%)に認め,側方リンパ節に再発を認めた症例は4例(2.2%)であった(観察期間中央値66.3か月).mrEMVI-かつmrLLNmax≦5mmの症例は60例であり,全例で側方リンパ節転移陰性であり,側方リンパ節に再発を来した症例は認めなかった.
【結語】術前MRI検査でEMVI陽性,側方リンパ節の最大短径>5mmは有意に側方リンパ節転移陽性と関連していた.予防的側方郭清の省略を検討する場合にはそれらの所見に留意する必要があると思われる.