講演情報
[P19-1-5]腹腔鏡補助下左側結腸切除術後に絞扼性腸閉塞および末梢動脈疾患の急性増悪を生じた1例
曽我 真伍 (金沢市立病院)
症例は79歳女性.特記すべき既往歴はなし.初診の2週間前より排便異常を自覚し近医にて緩下剤を処方されていたが,腹部膨満感と腹痛を主訴に当院を受診した.腹部CT検査にて下行結腸癌による狭窄とそれによる大腸閉塞と診断し,大腸ステントを留置した.ステント留置26日目に腹腔鏡補助下左側結腸切除術(D3)を施行した.術後の経過は良好であり退院を予定していたが,術後11日目に嘔吐と食欲不振を生じ,腹部CT検査にて絞扼性腸閉塞と診断した.経過で腹痛を認めないものの解除は期待できず,術後12日目に緊急開腹手術を施行した.術中所見で腸間膜欠損部から生じた内ヘルニアにより回腸が約90cmにわたり絞扼されており,用手的に整復を行い,腸管の血流が保たれていることから腸管切除は施行しなかった.緊急手術前後より左下肢の不快感の訴えがあり,緊急手術後2日目に左下肢の疼痛と冷感,足背動脈の触知が不良となり,ABI検査と下肢血管造影CTにて末梢動脈疾患の急性増悪と診断した.術後超急性期で緊急血行再建術は困難と判断し,血管拡張薬の内服を行い,発症21日以降にPTAを2回にわたり施行した.救肢は可能であったが足趾末端の難治性皮膚潰瘍を生じ,保存的加療を継続した.腹腔鏡補助下での左側結腸切除術後は内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞を生じやすく,十分な注意が必要である.また消化管術後の末梢動脈疾患の急性増悪に関する報告は少ないが,深部静脈血栓症の予防処置が増悪因子になる可能性があること,超急性期に血行再建術を行うことは術後出血のリスクがあり,その適応は慎重に判断せざるを得ないこと,などが問題点として挙げられる.今回,腹腔鏡補助下左側結腸切除術後に絞扼性腸閉塞を発症し,さらに末梢動脈疾患の急性増悪を併発した1例を経験したので,文献的考察を加えて考察する.