講演情報

[P17-2-4]大腿筋膜張筋弁による腹壁再建を行った進行S状結腸癌の1例

高田 考大, 今泉 潤, 吉田 知典, 尾嶋 仁 (群馬県立がんセンター)
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背景
局所進行の結腸癌では腹壁への浸潤がしばしば見られる.広範囲の腹壁合併切除では何らかの再建を行う必要がある.メッシュ再建が比較的簡便ではあるが,感染を伴う場合には人工物の使用は困難である.今回われわれは腹壁浸潤・膿瘍形成を伴うS状結腸癌に対して腹壁合併切除および大腿筋膜張筋弁による腹壁再建を行った症例を経験したので報告する.
症例
50歳代男性.腹壁浸潤を伴う進行S状結腸癌cT4b(腹壁)N2bM0,cStageIIIc.局所進行癌であり,縮小が得られたら切除について再検討する方針で人工肛門造設後に化学療法を開始.PANI+mFOLFOX6 3コース後に重度の下痢を発症し入院.副作用で化学療法中断を余儀なくされ病勢増悪.腫瘍の浸潤に伴い腹壁に膿瘍形成を伴い,繰り返しの入院治療を要した.感染の制御が困難であり,化学療法の継続も困難であるため原発切除を行う方針とした.待機的に開腹S状結腸切除及び腹壁合併切除を施行した.形成外科と合同で手術を行い,有茎大腿筋膜張筋弁で腹壁再建を行った.症状コントロール目的の手術であるが,術後3ヶ月で再発なく経過中,筋弁採取部に液体貯留はあるものの大きな合併症は認めていない.
考察
腹壁再建には比較的簡便な方法として合成繊維製のメッシュが用いられるが本症例では感染を伴うため使用することができなかった.腹直筋皮弁等も一般的に用いられるものの,本症例では右腹直筋を貫いて人工肛門が形成されていることと,左か腹壁動静脈を腹壁浸潤した腫瘍が巻き込んでいたことから腹直筋を使用することはできなかった.大腿筋膜張筋は比較的サイズに余裕があるため大きな再建にも使用することができる.ほぼ腱膜のみでの再建であるが,現時点までで腹壁の過剰な変形やヘルニアなどの問題はきたしていない.
人工物の留置困難な腹壁の欠損の再建に大腿筋膜張筋弁は有用であった.