講演情報

[P15-1-6]術後切迫破裂を来たし緊急手術を要したAcquired isolated hypoganglionosisの1例

口分田 亘, 中川 慶二, 市川 直, 谷川 優麻, 光岡 英世, 小松原 隆司, 上原 徹也, 小川 晃平, 藤本 康二, 前田 哲生, 東山 洋 (神鋼記念病院消化器外科)
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【はじめに】Acquired isolated hypoganglionosis(以下AIHG)はHirschsprung病類縁疾患の1つである.非常に稀な疾患であり診断や治療方針が定まっていないのが現状である.
【症例】51歳女性,学童期より難治性の便秘症に対して下剤を使用していた.40歳頃より直腸脱を認め,脱出症状の増悪を主訴に近医より当院紹介となった.腹部CT検査では閉塞起点を伴わないびまん性の結腸拡張を認めた.下部消化管内視鏡検査では明らかな器質的疾患は認めず,放射線不透過性マーカーを用いた輸送能検査では20個中6個が左側結腸に停滞していた.直腸肛門反射は陽性であった.慢性偽性腸閉塞症の診断で保存加療を行うも経過中に腹痛の増悪を認め,内科的治療は困難と判断し腹腔鏡下結腸全摘術を施行した.術後3日目に経肛門ドレーンを抜去したところ回腸直腸吻合部の著明な拡張を認めた.経肛門的に減圧を行うも症状は改善せず,吻合部の切迫破裂として術後7日目に腹腔鏡下直腸切除術および回腸単孔式人工肛門造設術を施行した.術後の病理検査にて回腸から直腸に渡って神経節細胞の変性および減少を認め,AIHGと診断した.
【考察】過去の研究において日本における10年間のHirschsprung病類縁疾患患者350例中,AIHGはわずか9例のみで非常に稀とされる.AIHGは乳児期から学童期以降の幅広い年齢層で発症し慢性の便秘症を呈すると報告されているが,その希少性から治療方針は定まっていない.また診断において病理検査が必要であることから,本症例の様に術後に初めてAIHGと診断された報告も少なくない.AIHGでは罹患腸管を切除することで予後は良好とされるが,不適切な外科的治療を行った場合に縫合不全や著明な人工肛門脱出などの重篤な合併症を来した報告もあり,慢性便秘症に対して外科的治療を行う際にはAIHGの可能性も考慮した上で手術適応や術式に関して判断する必要がある.
【結語】慢性偽性腸閉塞の診断で外科的治療を行い,術後切迫破裂により再手術を要したAIHGの症例を経験した.