講演情報

[R4-1]ロボット支援手術におけるトラブル対処と安全対策

川崎 誠康 (ベルランド総合病院外科)
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3D画像と精緻な鉗子動作により特に骨盤深部など狭小空間においてロボットは強力な支援ツールとなる一方で,制限のある術野や複雑な機器設定・操作法といった特有の問題が存在し,緊急時の対応に苦慮することがある.
 2019年6月にダビンチを外科より導入後,泌尿器科・呼吸器外科・婦人科が参入してそれぞれ症例を蓄積してきたが,重大な術中トラブルとして1.腸管壁損傷,2.重要血管損傷が認められた.これらの原因となった背景と現場での対処法,その後に施設として運用した対策について考証した.
 【結果】2024年3月までに外科461例,泌尿器269例,呼吸器146例,婦人科11例,計887例のロボット手術術中に緊急ロールアウトを施行して修復した血管損傷が3例あり,1例は直腸癌手術中に発生した.骨盤内手術に限らずトラブル発生の背景には,1.ミストや出血などの影響で視認性が不良となった術野での操作続行,2.執刀医のカメラ術野外での鉗子操作,3.助手との連携不備,が確認された.現在ロボット手術にかかわるすべての科が関わる複数科横断的トラブル事例検討会を定期開催し,トラブル発生の背景と対策法について意見交換する機会を設けている.
 【考察】突然の重大トラブル発生時には手術室全体が混乱するので,まずは執刀医が損傷部位を圧迫して的確に状況把握して冷静に対応するよう努めることが肝要である.局所的には縫合により損傷個所を修復することが基本であるが,多くはcleanな術野が保持できていない状況に起因しており,予防策として常より臓器展開の定型化やミストの持続吸引といった工夫,さらに助手からの声掛けなどを常態化しておく必要がある.また使用instrumentの回数期限やenergy deviceの設定,そして緊急時の血管外科などへの連絡方法・使用機器の保管場所といった情報を,外回りを含めた全員が共有するシステムを構築しておき,チーム全体で安全を確保するという姿勢をもっている必要がある.各trouble時の対応を供覧し,施設として構築してきた安全対策を示す.