講演情報

[P16-2-6]クローン病の会陰創治癒遅延症例の検討

野村 和徳1, 堀尾 勇規1, 内野 基1, 友尾 祐介1, 長野 健太郎1, 楠 蔵人1, 桑原 隆一1, 木村 慶2, 片岡 幸三2, 別府 直仁2, 池田 正孝2, 池内 浩基1 (1.兵庫医科大学病院炎症性腸疾患外科, 2.兵庫医科大学病院下部消化管外科)
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(目的)クローン病(以下;CD)患者において,直腸切断術後の会陰創部感染の頻度は高く,創傷治癒遅延を起こすPersistent Sinus(以下;PS)が問題となっている.今回,CDにおけるPS合併症例について検討することを目的とした.
(対象と方法)2011年11月から2023年12月までに当科にて手術を施行したCDの直腸切断術症例101例を対象とした.術後から6か月以上,創傷治癒遅延を認めるものをPSと定義し,会陰創治癒遅延の検討を行った.
(結果)101例中19例(18.8%)にPSを認めた.男女比は15:4,初発年齢は16歳未満が5人(26.3%),17歳以上から40歳未満は14人(73.7%),40歳以上は0人(0.0%),病型は小腸型が1人(5.3%),大腸型が7人(36.8%),小腸大腸型が11人(57.9%)であった.14例(73.7%)に術前から肛門病変を認め,そのうち感染を認めたものは7例(36.8%)であった.発症から直腸切断までの病脳期間は中央値173(79-323)か月であった.手術時の因子として,手術時間は中央値254(121-619)分,出血量は中央値327(60-2020)mlであった.術後は会創部感染を16人(84.2%)認め,創部から耐性菌の検出を7例(ESBL1例,MRSA6例)認めた.観察期間は36か月(16.4-56.3)か月で,完全に閉鎖した症例は4/14例(28.5%)に留まっていた.退院後も疼痛コントロールを要した症例は8例(42.1%)であり,疼痛を認めた期間は4.7(2.2-57.1)か月であった.創部からの浸出液は全例に認められ,36.1(9.8-48.4)か月と疼痛に比べ長期であった.創部の閉鎖を認めていない10例の内,6例は開放創が一部で浸出液あるいは排膿を認めるのみであるが,残りの4例は高度難治例であり治療に苦慮している状態である.
(結語)CDにおける直腸切断術後の約20%にPSが合併した.PS合併例では術前より肛門病変を有し,術後会陰創の感染率が高かった.PSを合併すると創部離開,浸出液等により治療が長期化し,治療に難渋することがある.