講演情報

[O10-6]当科における局所進行直腸癌の術前治療

財津 瑛子, 川副 徹郎, 工藤 健介, 中西 良太, 安藤 幸滋, 中島 雄一郎, 沖 英次, 朋晴 吉住 (九州大学病院消化器・総合外科)
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【はじめに】西欧諸国では術前補助療法(TNT)後の直腸癌の非手術管理(NOM)が手術の有望な代替手段とされている.手術先行を治療戦略としていた本邦においても,近年術前治療が注目されておりその治療変化および治療成績について検討することが重要になっている.本検討では当科における局所進行直腸癌(LARC)の術前治療の変化を明らかにすることを目的とする.
 【方法】2004年から2022年までに当科にてレトロスペクティブに解析を行った.計391人の患者がLARC(T3/T4またはリンパ節陽性)と同定された.患者を手術群(UP群,297例),術前放射線治療群(RT群,TNT含む39例),術前補助化学療法群(NAC群,55例)に分け,解析を行った.
 【結果】患者の背景は男性244人(64%),女性138人(36%),平均年齢は61.2歳(±11.3歳)であった.当科では2011年から術前治療が施行されており,計91例(23%)が術前治療を受けていた.2011年から2016年と2017年から2022年の前半と後半に術前治療を受けた患者の人数を調べたところ,各グループの人数はUP群92人/103人,RT群9人/30人,NAC群32人/23人であり,RT群の割合が有意に増加していた.(p=0.0052)UP群とRT群を傾向スコアマッチングにてマッチングさせた後解析を行ったところ(各群31例),統計学的に有意ではないもののRT群では無再発生存期間が延長していた.(中央値 3.7年対6.7年,p=0.077)TNTは10例で実施され,3例はNOMを受けた(33.3%).
 【まとめ】当科において術前治療を行う頻度は上がり,特に放射線治療を施行する患者が多くなっていた.既知の報告と同様に放射線治療は無再発生存率の向上に寄与することが示唆された.TNT施行患者のCR率は西欧からの報告と合致するものであり,NOMの利益があることは特筆すべきことと思われた.