講演情報

[PD1-7]直腸術後難治性排便障害に対する経肛門的洗腸療法の有用性に関する検討

本間 祐子, 味村 俊樹, 利府 数馬, 東條 峰之, 伊藤 誉, 井上 賢之, 鯉沼 広治, 堀江 久永, 北山 丈二, 山口 博紀, 佐田 尚宏 (自治医科大学消化器一般移植外科)
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【背景】本邦では,ペリスティーンプラスアナルイリゲーションシステム(以下,ペリスティーン)を用いた経肛門的洗腸療法(transanal irrigation,以下TAI)が,脊髄障害に起因する難治性排便障害に対して保険適用となっているが,低位前方切除後症候群(low anterior resection syndrome,以下LARS)や鎖肛・Hirschsprung病術後など直腸術後の難治性排便障害にも有用とされる.しかし本邦では,直腸術後の難治性排便障害に対するペリスティーンを用いたTAIは保険適用となっていない.
【目的】直腸術後の難治性排便障害に対するペリスティーンを用いたTAIの成績を評価し,その有用性を検討する.
【方法】2018年5月~2024年4月に当院排便機能外来でTAIを実施した直腸術後難治性排便障害患者を対象に成績を検討した.治療効果はTAI開始前,開始後2週目,10週目に排便管理に関する満足度をVisual Analog Scale(最善10点-最悪0点,以下VAS)を用いて評価し,症状に関してはLARS特異的排便障害スコアであるLARSスコア(最善0点-最悪42点,以下LARSs)とCleveland Clinic Florida Fecal Incontinence score(最善0点‐最悪20点,以下CCFIS)を用いて評価した.
【結果】対象患者は7名で,男性5名(71%),年齢中央値61歳,原因疾患はLARS5名,鎖肛術後1名,Hirschsprung病術後1名であった.TAIに使用したカテーテルは,コーン型4名,バルーン型3名であった.TAI継続期間中央値は14.2ヶ月(範囲:1.9-88.3ヶ月)で,7名中6名は10週目以降もTAIを継続(継続率86%)したが,1名は効果なく8週目で中止し,永久ストーマ造設術を受けた.TAI実施中の有害事象はなかった.VAS中央値は,開始前1.7→2週目7.6→10週目9.3点と開始前と比べて有意に改善した(開始前vs 2週目,開始前 vs 10週目:p=0.03).LARSs中央値(n=5)は,開始前36→2週目35→10週目30点,CCFIS中央値(n=6)は,13→7→8.5点と有意な改善を認めなかった.
【結語】直腸術後難治性排便障害患者7名にTAIを実施し,6名が10週目以降もTAIを継続し,継続率は86%であった.症状スコアに有意な改善はなかったが,排便管理に関する満足度はTAI開始前に比べ2週目,10週目で有意に改善した.TAIは直腸術後難治性排便障害に対しても有用であると考える.