講演情報

[VPD5-1]Parks分類で括約筋貫通型に分類されるIIL型痔瘻症例の検討

小野 朋二郎, 三宅 祐一朗, 久能 英法, 相馬 大人, 安田 潤, 齋藤 徹, 根津 理一郎, 弓場 健義 (大阪中央病院外科)
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隅越分類でIIL型痔瘻に分類される低位筋間痔瘻は,瘻管の走行がまっすぐで単純なIILS型と,それ以外の所謂複雑なIILC型に分けられる.司会の言葉にもあるように,このIILC型はIILS型以外の低位筋間痔瘻のすべてを網羅するものであり,様々な形態の低位筋間痔瘻が含まれている.またこの分類は原発巣の位置に基づいており,そこから先の瘻管の存在部位については曖昧である.痔瘻の分類として欧米で広く受け入れられているParks分類では筋間に原発巣を有する痔瘻を,原発巣より末梢側の瘻管(2次瘻管)の走行に応じてIntersphincteric fistulaとTranssphincteric fistulaとに分類されている.一般的に低位筋間痔瘻は低位の内外括約筋間に生じた原発巣から瘻管が筋間を下降し,皮下外括約筋を貫いて肛門周囲の皮下に至るものと考えるが,低位筋間の原発巣から瘻管浅外括約筋を貫いて通常の低位筋間痔瘻より若干深い部位を瘻管が走行する痔瘻があり,このような痔瘻はParks分類においてはTranssphincteric fistulaに分類される一方で,隅越分類のなかでII型とすべきかIII型とすべきかを悩むことがある.このような症例がどの程度あるものか,自験例の中で検討した.
2021年1月から2023年12月までの3年間に筆頭演者が痔瘻根治術を施行した低位筋間痔瘻症例は649例で,このうちIILC型痔瘻は207例(31.8%)であった.IILC型痔瘻の内訳であるが,単純なIILS型痔瘻が多発している症例が68例,瘻管が分岐する症例が21例,長い2次瘻管を有するか肛門外に広範囲の膿瘍を合併した症例が79例あった.上記のような低位筋間の原発巣から浅外括約筋を貫いてやや深い部位を瘻管が走行する症例は36例であった.これら36例について臨床的所見及び手術所見について診療録を参照して後方視的に検討を行った.
36例のうち男性は28例,女性は8例で年齢の平均は40.8±13.1歳であった.8例にseton法での痔瘻根治術を施行し,28例に括約筋温存法での痔瘻根治術を施行したが,括約筋温存法を施行した28例の中で2例は原発閉鎖部が再開通してseton法に移行した.また創の治癒が不良で軟膏処置を必要とした症例が1例あった.