講演情報

[R6-1]潰瘍性大腸炎術後回腸嚢関連疾患の治療経過の検討

杉田 昭1, 辰巳 健志1, 黒木 博介1, 後藤 晃紀1, 小原 尚1, 中尾 詠一1, 斎藤 紗由美1, 荒井 勝彦1, 木村 英明2, 小金井 一隆1 (1.横浜市立市民病院炎症性腸疾患科, 2.横浜市立大学市民総合医療センター炎症性腸疾患センター)
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【目的】潰瘍性大腸炎に対する標準術式は大腸全摘,回腸嚢手術(回腸嚢肛門吻合術,回腸嚢肛門管吻合術)である.術後経過は良好であるが,経過とともにprepouch ileitis,chronic pouchitis,cuffitis,peivic sepsis,pouch neoplasia,Crohn病またはCrohn病様病変への診断変更例などの潰瘍性大腸炎術後回腸嚢関連疾患を生ずることがある.今回はこれらのうち,潰瘍性病変を主体とし,一部には瘻孔を生ずる疾患の治療経過を自験例で後方視的に検討した.【方法】当科で回腸嚢手術を施行した潰瘍性大腸炎のうち集計した1372例(回腸嚢肛門吻合術206例,回腸嚢肛門管吻合術1166例)を対象とした.手術適応は重症が28%,難治57%,大腸癌またはdysplasia15%で,回腸嚢機能開始からの経過観察期間は平均5.8年(中央値4.0年)であった.今回はこれらのうち,潰瘍性病変を主体とするcuffitis,pelvic sepsis, Crohn病またはCrohn病様病変への診断変更例,pelvic sepsisの治療経過を自験例で後方視的に検討した.
【結果】Cuffitisは7例(0.5%),pelvic sepsis2例(0.1%),Crohn病またはCrohn病様病変への診断変更は7例(0.5%)であった.1)Cuffitis(7例):皮膚への膿瘍穿破を1例,膣瘻を1例に認め,これらの症例を含めて回腸嚢切除術を3例に施行した.抗TNFα製剤投与を施行した1例は上皮化がみられたために中止したが,再発で再開し,改善した.2)Peivic sepsis:晩期縫合不全の1例に回腸嚢切除術を施行した.3)Crohn病またはCrohn病様病変への診断変更例(7例):5例で白苔を伴う潰瘍が回腸嚢内全体に散在し(一部は縦走化),介在粘膜には明らかな炎症は見られなかった.Afferent limbに潰瘍,狭窄を認めた1例には回腸切除術と回腸嚢内に高度の炎症を伴った1例には回腸嚢切除を施行し,4例(1例は手術例と重複)には抗TNFα抗体製剤を投与して3例で潰瘍の上皮化がみられた.
【結語】潰瘍性大腸炎術後回腸嚢関連疾患のうち,潰瘍性病変を主体とし,一部には瘻孔を生ずるcuffitis,pelvic sepsis,Crohn病またはCrohn病様病変への診断変更例には病変によって抗TNFα抗体製剤,または手術治療を選択することが必要である.