講演情報

[VPD3-1]成人大腸腸重積の特徴と腹腔鏡手術の有用性

小嶌 慶太1, 横田 和子1, 田中 俊道1, 横井 圭悟1, 古城 憲1, 三浦 啓壽1, 山梨 高広1, 佐藤 武郎2, 内藤 剛1 (1.北里大学医学部下部消化管外科学, 2.北里大学医学部附属医学教育研究開発センター医療技術教育研究部門)
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【はじめに】成人腸重積は比較的稀である.緊急手術を行うべきか,整復をするか,アプローチ法はどうするかなど,小児腸重積症と異なり確立した治療ガイドラインは存在しない.
【目的】成人大腸腸重積の臨床的特徴と,腹腔鏡手術の有用性と安全性を明らかにする.また,当院での腹腔鏡手術のビデオ提示を行う.
【対象と方法】2001年から2023年に大腸腸重積の診断で手術が施行された20例を対象とした.さらに腹腔鏡施行症例を抽出して後方視的に臨床的特徴と術後短期成績を検討した.
【結果】性別は男性8例/女性12例,年齢中央値は69[51-89]歳,重積部位は盲腸4例/上行結腸11例/横行結腸3例/S状結腸2例,先進部の原因疾患は悪性腫瘍15例/良性腫瘍4例/特発性1例,術前に整復を試みたのは6例(30%)で全例が整復不能であった.診断から48時間以内に緊急手術が行われたのは8例(40%)で,腹腔鏡手術が施行されていたのは17例(85%)であった.次に,腹腔鏡手術施行症例を対象に,緊急手術7例(A群)と待機的手術10例(B群)の二群間比較を行った.臨床的背景はいずれも有意差を認めなかった.また,手術時間(A群162分[121-205],B群195分[124-320]),出血量(A群5g[5-125],B群8g[5-159]),Clavien-Dindo分類Grade2以上の術後合併症(A群1例,B群4例),術後在院日数(A群8日[8-11],B群12日[6-94])に関しても有意差を認めなかった.
【考察】大腸腸重積に対する腹腔鏡手術は緊急手術においても術後短期成績に影響はみられなかった.しかし,原因疾患は95%が腫瘍性病変であったことから,待機的手術が可能であれば術前に先進部の診断を付けることは腸管の切除範囲やリンパ節郭清の計画をたてるうえで有益と考えられた.なお,非観血的整復の成功率は低いことから対象症例は限定する必要がある.
【結語】成人大腸腸重積の緊急症例に対して,腹腔鏡手術は待機,緊急共に有効で安全なアプローチ方法であった.