講演情報

[VPD2-7]解剖理解とロボット手術がもたらす簡単で合併症の少ない腹膜外経路ストーマ造設術

牛込 創, 高橋 広城, 上原 崇平, 浅井 宏之, 加藤 瑛, 藤井 善章, 渡部 かをり, 鈴木 卓弥, 瀧口 修司 (名古屋市立大学消化器外科)
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【はじめに】腹膜外経路ストーマは傍ストーマヘルニア(PSH)予防に有用であるとされるが,造設時の手技は煩雑で時間を要する.特にストマサイトマーキング(SM)部からの剥離層と腹腔内からの剥離層を交通させる操作は盲目的で難渋する.
当院では以前よりこの腹膜外経路ストーマ造設に取り組んできた.そして腹壁の詳細な解剖理解を深め,ロボット手術を用いる事で容易な腹膜外経路ストーマ造設が可能となった.『合併症を低減させ手技も容易なロボット支援下腹膜外経路ストーマ術』を今回報告し現在行っているカダバーを用いた研究についても紹介する.
【方法/結果】
後腹膜経路はロボット支援下に腹腔内から可及的に作成する.この際ロボットの多関節機能により腹腔鏡では困難な腹壁の高さまで剥離出来るのは一つ重要な点である.次に重要なポイントは腹腔内から腹膜に沿って剥離してきた剥離層を腹膜下筋膜を認識して切開し腹横筋が露出する層に乗り換える事である.腹膜下筋膜はSM部からの剥離層と腹腔内からの剥離層の間に存在する膜状構造物でこの層の存在によりトンネリング操作が困難となると考えている(カダバーを用いた研究でも腹膜下筋膜の存在は明らかで現在論文作成中である).そのためこの腹膜下筋膜を切開し腹横筋を腹壁近くで広く露出させておくと,SM部から腹膜に沿った剥離を進めた時に容易に腹腔内からの層とつながりトンネリングが完成する.
当院では2018年5月~2024年4月の期間にロボット直腸切除を行った症例の中で66例に単孔式結腸ストーマ造設を行った.その中で腹膜外経路ストーマは37例(56%)であった.腹膜外経路ストーマは,腹腔内経路ストーマに17分(11-24)時間をかけるだけで造設可能であった.PSHは腹膜外経路ストーマで2.7%で,腹腔内経路ストーマの34.5%と比較して有意に少なかった(p=0.003).
【結語】
ロボット支援腹膜外経路ストーマ造設は容易で有意にPSHが少なかった.
今回,SM部から腹腔鏡操作で作成した腹膜外経路とロボット支援下に腹腔側から作成した腹膜外経路が,腹膜下筋膜を介して互い違いになる動画を供覧し,簡単確実なロボット支援下腹膜外経路ストーマ造設術について報告する.