講演情報

[SR2-5]当院におけるロボット右側結腸切除術における腹腔内吻合と腹腔外吻合の比較検討

山川 雄士, 加藤 匠, 横井 佑梨, 加古 智弘, 佐藤 怜央, 越智 靖夫, 春木 伸裕 (トヨタ記念病院消化器外科)
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【背景】
2022年4月にロボット支援下結腸癌手術が保険適応となってから,当院ではほぼすべての結腸癌に対してロボット手術を行っている.右側結腸癌におけるロボット支援下結腸切除術導入直後は体腔外吻合(EA)を行い,手術手技が確立した後に体腔内吻合(IA)を行い始めて,現在では術前腸閉塞症例や,巨大結腸癌症例を除き,ほぼすべての右側結腸癌症例にIAを行っている.
結腸切除後のIAは,腸管受動範囲が少なくてすむ,術後の腸管機能回復までの期間が短い可能性が示され,体腔内吻合を行う施設が近年増えてきている.一方で,手技的な難しさ,また術後合併症や長期予後に関するデータが十分でないなどの懸念点もある.今回,我々は,当院の右側結腸癌におけるロボット支援結腸切除術におけるIAとEAについて検討した.
【方法】
2022年4月から2024年4月に当院で右側結腸癌(盲腸癌,上行結腸癌,肝弯曲寄りの横行結腸癌)に対してロボット結腸癌手術を行った106例を対象とし,IA群73例,EA群33例の患者背景,周術期成績について後方視的に比較検討した.
【結果】患者背景において年齢,性別,BMI,ASA-PSにおいて差を認めなかったものの,術前イレウスはEA群において優位に多かった(IA:5.7%,EA:18.2%,p=0.04).周術期成績においては,手術時間(IA群:205分,EA群:160分 p<0.01),ICG終了後から吻合終了までの時間(IA群:18分,EA群:13分,p<0.01)と優位にIA群で手術時間,吻合時間ともに長かった.出血量(IA群:3ml,EA群:5ml,p=0.79)で有意差を認めなかった.Clavien-Dindo分類Grade 3以上の合併症はIA群で1例吻合部出血,1例腹壁膿瘍を認めたものの,両群間で有意差を認めなかった.両群で縫合不全は1例も認めなかった.病理組織では,腫瘍遠位断端距離(IA群:110mm,EA群:100mm,p=0.01)と有意差を認めた.観察期間(27.2か月)内において,体腔内吻合を行った1例(pT4aN1M0)に腹膜播種再発を認めた.
【結語】ロボット支援結腸癌手術における体腔内吻合は体腔外安全と比較して,手術時間は優位に延長するものの術後合併症の発生に差はなく,安全に施行可能である.