講演情報
[P9-1-1]大腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻に対して腹腔鏡手術を施行した3例
安田 潤, 弓場 健義, 相馬 大人, 三宅 祐一朗, 久能 英法, 小野 朋二郎, 齋藤 徹, 根津 理一郎 (伯鳳会大阪中央病院)
【緒言】大腸憩室炎の多くの症例は無症状で経過し憩室炎や出血を伴うのは約20%,そのうち瘻孔を形成するのは約2%と報告されている.S状結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻は手術を必要とすることが多い.大腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻に対して手術を施行し根治した症例を3例経験したので報告する.【症例】症例1は71歳男性,発熱,腹痛で近医受診される.精査加療目的で当院受診しCTでS状結腸憩室炎による腹腔内膿瘍,膀胱瘻を認め入院加療となる.抗生剤にて軽快し後日予定手術とした.手術は腹腔鏡下に結腸膀胱との癒着を剥離し前方切除術を施行した.膀胱との瘻孔部分はリークテスト陰性で縫合などは行わず手術を終了した.症例2は57歳男性,1か月前より排尿痛が出現し近医受診される.抗生剤加療を行うも,再燃認め当院泌尿器科に紹介受診.MRIにて膀胱背側に膿瘍を形成し結腸憩室瘻疑いで当科紹介となる.手術は腹腔鏡下に施行しS状結腸部分切除術を施行,膀胱瘻部分は膀胱よりリークテスト陰性であり修復せずに手術を終了した.症例3は60歳男性,発熱にて当院受診しCTで急性腎盂腎炎を認め入院加療となる.既往歴に膀胱結腸憩室炎に対して手術歴があり,糞尿を認めたため結腸膀胱瘻再燃で当科紹介受診となる.手術は腹腔鏡下に行うも前回手術による癒着のため腹腔鏡継続は困難と判断し開腹下に施行しS状結腸と膀胱の瘻孔部分を剥離.結腸部分は瘻孔部分も含めS状結腸切除術を施行.膀胱も瘻孔部分を含め切除し断端は縫合閉鎖した.回腸ストーマを作成し手術を終了した.【考察】手術術式に関しては結腸切除に膀胱部分切除を同時にすることが最も標準的と考えられていたが,近年では,膀胱部分切除は不要とする報告が多い,当院の症例でも1例のみ膀胱部分切除を施行し膀胱の縫合閉鎖を施行した.2例は瘻孔切除のみで特に膀胱部分切除は必要なかった.術中に腸管損傷や尿管損傷などの臓器損傷をきたした症例は認めなかった.【結語】大腸憩室炎による結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡手術は重篤な合併症の発生は少なく,拡大視効果による剥離層の同定や低侵襲性の観点からも有用な術式であると考えられた.