講演情報

[R15-3]直腸重積のOxford Rectal Prolapse Grade分類と排便障害の関連

鈴木 佳透, 黒水 丈次, 宮島 伸宜, 國場 幸均, 岡本 康介, 下島 裕寛, 宋 江楓, 河野 洋一, 松村 奈緒美, 彦坂 吉興, 紅谷 鮎美, 小菅 経子, 松島 小百合, 酒井 悠, 米本 昇平, 佐井 佳世, 松島 誠 (松島病院大腸肛門病センター)
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【目的】
排便障害にはさまざまな原因があるが,直腸の解剖異常によるものには直腸脱,直腸瘤,直腸重積などがある.この中で直腸重積は比較的頻度が高く,排便困難や便失禁の原因となるとされている.しかしながら無症状のボランティアでの有病率が50%とも報告されており,その病態生理や臨床的意義は明らかになっていない.そこで今回われわれは,直腸重積の重症度と排便障害の程度,その他臨床検査との関連を検討し報告する.
【方法】
対象は排便障害を主訴に当院受診し,2023年4月1日から2024年4月16日の間に排便造影検査を受け施行し直腸重積と診断された症例で,直腸肛門術後の症例は除外した.直腸重積はOxford Rectal Prolapse Grade(ORPG)を用いてgrade I~IVに分類し,排便回数,便性状,便漏れの有無,直腸肛門内圧検査所見との関連を評価した.
【結果】
排便造影を施行した308例のうち,直腸脱138例と直腸重積136例(ORPG I:10例,II:28例,III:53例,IV:45例)を認め,55例には直腸瘤の合併を認めた.直腸重積136例は男性22例,女性114例であり,女性においては年齢に応じて重症度が上がる傾向を認めた.(相関係数0.177,p=0.060).便失禁はORPG I:22.2%,II:66.7%,III:48.3%,IV:78.4%に認め,grade II以上で多くなる傾向にあり,最大静止圧もgrade II以上で低下(mean±SD:ORPG I:63.98±15.5,II:44.53±23.4,III:42.9±23.4,IV:39.0±21.2)を認め,重症度に応じて低下する傾向であった(相関係数-0.179,p=0.067).
【結語】
直腸重積は女性に多く,その病態として加齢とともに重積が進行し,直腸脱に進展することが考えられる.また,ORPG grade II以上では重積先端が肛門管上縁以下に至ることから最大静止圧および便失禁の原因となっている可能性が示唆された.