講演情報

[PD5-1]内視鏡治療後pT1大腸癌におけるリンパ節転移予測ノモグラムの診断能に関する検討

魚住 健志1, 関口 正宇1,2, 豊嶋 直也1, 高丸 博之1, 山田 真善1, 小林 望1, 斎藤 豊1 (1.国立がん研究センター中央病院内視鏡科, 2.国立がん研究センター中央病院検診センター)
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[背景]本邦の多施設共同後方視的研究で,pT1大腸癌のリンパ節転移リスク(LNM)を予測するノモグラムが開発された(Kajiwara Y, et al. GIE 2023).初回治療として根治的外科切除が行われた症例を含むデータセットを用いたLNM予測能の評価では,ノモグラムは良好な成績を示した.ノモグラムのさらなる発展に向け,実臨床において主たる使用対象となる内視鏡治療後pT1癌のみを対象に,新規にLNM予測能を評価することは重要である.今回,追加外科切除が行われた内視鏡治療後pT1癌を対象にノモグラムのLNM予測能を評価した.
[方法]2017年1月から2022年12月の間に当院で内視鏡治療を施行したpT1大腸癌284患者291病変中,追加外科切除を行った110患者110病変を対象とした.深達度のみが非治癒因子となるpT1癌をlow-risk T1,それ以外をhigh-risk T1とした簡易予測モデルおよびノモグラムの,同時性LNMに対する予測能をそれぞれ後方視的に評価した.
[結果]同時性LNMは9.1%(10/110)に見られた.転移予測における簡易モデルのAUCは0.68で,low-risk/high-riskの同時性LNM割合は2.1%/14%であった.ノモグラムのAUCは0.83(最低分化度の組織型を優先するとAUCは0.86)であり,予測LNM割合5%未満/≥5 <10%/>10 <20%/20%以上における実際の同時性LNM割合は1.9/8.3/14.8/42.8%であった.追加外科切除後に半年以上フォローアップが行われた107症例中4例に遠隔転移再発を認めた.簡易モデルにおけるlow-risk/high-riskの遠隔転移再発割合は0%/6.6%であった.ノモグラムの5%未満/≥5 <10%/>10 <20%/20%以上における遠隔転移再発割合は0/0/11.1/16.7%であった.
 [結語]ノモグラムは当院の内視鏡治療後pT1癌に限った検討でも良好な診断能を示した.内視鏡治療後無治療経過観察例も含めたさらなる検討が望まれる.