講演情報
[P14-1-5]高齢者に対する腹腔鏡下大腸手術のせん妄リスクについて
玉井 皓己, 鄭 充善, 辻村 正人, 西田 謙太郎, 森 総一郎, 吉川 幸宏, 野村 雅俊, 瀧内 大輔, 浜川 卓也, 辻江 正徳, 赤丸 祐介 (大阪ろうさい病院)
【背景】術後せん妄は入院期間を延長させ社会復帰を遅らせるだけではなく,長期予後にも影響を及ぼす.短期・長期治療成績の改善のため,せん妄リスク症例の抽出と対応が求められる.消化器領域では,開腹手術,高齢者,高ASAなどが術後せん妄リスクになることが知られている.ICU管理症例や整形外科領域ではBMIとせん妄の関係が複数報告されているが,高BMIか低BMIどちらがせん妄リスクとなるかは意見が分かれる.一方で,消化器領域においてせん妄に対するBMIの影響を検討した報告は極めて少ない.
【目的】腹腔鏡またはロボット支援下大腸癌手術を行った高齢者(80歳以上)に対し,BMIがせん妄の予測因子となるかを評価する.
【方法】2018年から2022年に大腸癌に対して腹腔鏡またはロボット支援下手術を行った229例.連続変数はROC解析によりカットオフ値を求め,せん妄に対するリスクを抽出した.せん妄はConfusion Assessment Methodによって判断した.
【結果】せん妄は25例に認めた(10.9%).術前因子のうち,BMI<18.5kg/m2(p<0.01),脳血管障害(p<0.01)がせん妄リスクとなる一方で,性別,腫瘍部位,心疾患,肺疾患はリスクとならなかった.手術・腫瘍学的因子のうち,腫瘍径≥49mm(p=0.03)がリスクとなる一方で,術式,手術時間,出血量,他臓器合併切除,ストマ造設,進行度はリスクとならなかった.単変量で抽出されたせん妄リスクとBMIの間に相関関係は認めなかった.多変量解析では,BMI<18.5kg/m2(OR:4.37,p<0.01)と脳血管障害(OR:4.89,p<0.01)がせん妄リスクとなった.
【考察】低BMIは低栄養,サルコペニア,代謝異常を反映する.これらは全身性高炎症状態の結果であり,脳ミクログリアの活性化やサイトカインの過剰生産を引き起こし,神経認知障害を起こすとされる.低BMIがせん妄リスクとなる理由は,低BMI症例が全身性高炎症状態にあるためと考えられる.
【結語】高齢者に対する腹腔鏡下大腸癌手術では,低BMIがせん妄リスクとなることが示唆された.
【目的】腹腔鏡またはロボット支援下大腸癌手術を行った高齢者(80歳以上)に対し,BMIがせん妄の予測因子となるかを評価する.
【方法】2018年から2022年に大腸癌に対して腹腔鏡またはロボット支援下手術を行った229例.連続変数はROC解析によりカットオフ値を求め,せん妄に対するリスクを抽出した.せん妄はConfusion Assessment Methodによって判断した.
【結果】せん妄は25例に認めた(10.9%).術前因子のうち,BMI<18.5kg/m2(p<0.01),脳血管障害(p<0.01)がせん妄リスクとなる一方で,性別,腫瘍部位,心疾患,肺疾患はリスクとならなかった.手術・腫瘍学的因子のうち,腫瘍径≥49mm(p=0.03)がリスクとなる一方で,術式,手術時間,出血量,他臓器合併切除,ストマ造設,進行度はリスクとならなかった.単変量で抽出されたせん妄リスクとBMIの間に相関関係は認めなかった.多変量解析では,BMI<18.5kg/m2(OR:4.37,p<0.01)と脳血管障害(OR:4.89,p<0.01)がせん妄リスクとなった.
【考察】低BMIは低栄養,サルコペニア,代謝異常を反映する.これらは全身性高炎症状態の結果であり,脳ミクログリアの活性化やサイトカインの過剰生産を引き起こし,神経認知障害を起こすとされる.低BMIがせん妄リスクとなる理由は,低BMI症例が全身性高炎症状態にあるためと考えられる.
【結語】高齢者に対する腹腔鏡下大腸癌手術では,低BMIがせん妄リスクとなることが示唆された.