講演情報
[R8-3]IHC法によるLynch症候群ユニバーサルスクリーニングの実際
藤吉 健司, 島村 智, 主藤 朝也, 久田 かほり, 川本 祐輔, 執行 ひろな, 菊池 麻亜子, 仕垣 隆浩, 吉田 直裕, 合志 健一, 吉田 武史 (久留米大学外科学講座)
【背景】
Lynch症候群(LS)は大腸癌において最も頻度の高い遺伝性腫瘍である.MSI検査やMMR-IHCは,LSのスクリーニングだけでなく,免疫チェックポイント治療のコンパニオン診断として普及している.当院では,2017年より前向き研究として大腸癌切除例全例にMMRの4種のタンパクを染色してIHCを行うユニバーサルスクリーニング(UTS)を実施している.本発表では,IHCの発現欠損パターンの臨床的特徴について検討した.
【方法】
2017年1月から2023年12月までの原発性大腸癌手術症例1106例のうち,MMR-IHCを実施した878例を対象とした.deficient-MMR(dMM)症例を対象に詳細な家族歴を聴取するプレ遺伝カウンセリングを実施した.プレカウンセリングを通して遺伝学的検査を希望された場合は遺伝外来にて遺伝カウンセリングを経て遺伝学的検査(GT)を実施した.
【結果】
MMR-IHCを施行した878例のうちdMMR:83例(9.5%)であった.IHC発現パターンをMLH1-PMS2欠損群(MLH1単独/PMS2単独を含む):61例(73%)とMSH2‐MSH6群(MSH2単独/MSH6単独を含む):20(24%)の2群に分けて検討した(全欠損例2例を除外).MLH1-PMS2欠損群は,MSH2‐MSH6群と比べ,女性・高齢・右側・大腸癌家族歴陰性例・異時性大腸癌陰性例が多かった.
無再発生存期間(StageII-IIIのみ)は,dMMR群(N=82)とpMMR群(N=796)の有意なの差は認められなかった(P=0.3).dMMR群(BRAF変異型を除く)66例に対し遺伝学的検査を26例(39%)に実施した.MLH1-PMS2欠損群(BRAF変異型を除く)GT検査率:31%(14/45)に対し,MSH2‐MSH6群は60%(12/20)であった.MLH1-PMS2欠損群のうち確定診断例は14%(2/14,MLH1=2例)に対して,MSH2‐MSH6群は75%(9/12,MSH2=6例,MSH6=2例)であった.
【結語】
本研究を通して,MMR発現パターンは責任遺伝子の予測につながるため,IHCパターンはLSの診断において重要である.MLH1-PMS2群はGT率が低く,高齢かつ家族歴陰性例が多いことが理由として考察できる.本研究は臨床研究による患者経済負担がない状況にもかかわらず低い検査希望率であった.外科主治医の遺伝性大腸癌に対する認識とその重要性が患者に伝わっているかどうか,患者の関心や理解度がGT検査率と関連するかもしれない.
Lynch症候群(LS)は大腸癌において最も頻度の高い遺伝性腫瘍である.MSI検査やMMR-IHCは,LSのスクリーニングだけでなく,免疫チェックポイント治療のコンパニオン診断として普及している.当院では,2017年より前向き研究として大腸癌切除例全例にMMRの4種のタンパクを染色してIHCを行うユニバーサルスクリーニング(UTS)を実施している.本発表では,IHCの発現欠損パターンの臨床的特徴について検討した.
【方法】
2017年1月から2023年12月までの原発性大腸癌手術症例1106例のうち,MMR-IHCを実施した878例を対象とした.deficient-MMR(dMM)症例を対象に詳細な家族歴を聴取するプレ遺伝カウンセリングを実施した.プレカウンセリングを通して遺伝学的検査を希望された場合は遺伝外来にて遺伝カウンセリングを経て遺伝学的検査(GT)を実施した.
【結果】
MMR-IHCを施行した878例のうちdMMR:83例(9.5%)であった.IHC発現パターンをMLH1-PMS2欠損群(MLH1単独/PMS2単独を含む):61例(73%)とMSH2‐MSH6群(MSH2単独/MSH6単独を含む):20(24%)の2群に分けて検討した(全欠損例2例を除外).MLH1-PMS2欠損群は,MSH2‐MSH6群と比べ,女性・高齢・右側・大腸癌家族歴陰性例・異時性大腸癌陰性例が多かった.
無再発生存期間(StageII-IIIのみ)は,dMMR群(N=82)とpMMR群(N=796)の有意なの差は認められなかった(P=0.3).dMMR群(BRAF変異型を除く)66例に対し遺伝学的検査を26例(39%)に実施した.MLH1-PMS2欠損群(BRAF変異型を除く)GT検査率:31%(14/45)に対し,MSH2‐MSH6群は60%(12/20)であった.MLH1-PMS2欠損群のうち確定診断例は14%(2/14,MLH1=2例)に対して,MSH2‐MSH6群は75%(9/12,MSH2=6例,MSH6=2例)であった.
【結語】
本研究を通して,MMR発現パターンは責任遺伝子の予測につながるため,IHCパターンはLSの診断において重要である.MLH1-PMS2群はGT率が低く,高齢かつ家族歴陰性例が多いことが理由として考察できる.本研究は臨床研究による患者経済負担がない状況にもかかわらず低い検査希望率であった.外科主治医の遺伝性大腸癌に対する認識とその重要性が患者に伝わっているかどうか,患者の関心や理解度がGT検査率と関連するかもしれない.