講演情報
[O9-3]当院における下部直腸癌に対する内肛門括約筋切除の短期長期的成績
田島 ジェシー雄, 松本 圭太, 浅井 竜一, 鷹尾 千佳, 木山 茂, 松橋 延壽 (岐阜大学病院消化器外科)
【背景】肛門に近い下部直腸癌に対する内括約筋切除(ISR)は永久人工肛門を回避する肛門温存術式として広く行われており,進行例や前治療症例にも適応拡大している.一方で,腫瘍学的妥当性においては腹会陰式直腸切断術に劣らないとされているが,CRM(Circumferential resection margin)の確保など腫瘍学的な安全性が課題として挙げられており,適応は慎重に判断する必要がある.現在ロボット支援によるISRも広く行われるようになっており,その精緻な機能により短期長期成績に寄与することが期待されている.今回当科で施行したISRの短期長期成績を腹腔鏡手術とロボット支援下手術と比較検討した.
【対象と方法】2009年7月~2023年12月までに当科で腹腔鏡下もしくはロボット支援下にISRを施行した下部直腸癌88例を後方視的に検討した.
【結果】腹腔鏡を68例(L群),ロボット支援を20例(R群)に施行した.(L群:R群)年齢中央値は64:67(歳)(p=0.71),性別は男性が63:70(%)(p=0.58).前治療は14:30(%)(p<0.01)とR群で有意に多かった.側方リンパ節郭清はL群で有意に多く(21:0(%)(p=0.03)),R群で手術時間は有意に短く(386:328(分)(p<0.01)),出血量も有意に少なかった(110:35(ml)(p<0.01)).短期成績では,合併症Clavien-Dindo grade≥III;19:5(%)(p=0.13)と統計学的有意差は得られなかったがR群で少ない傾向であった.また長期成績では,遠隔転移再発は全体で14/88(15.9%),L群で11/68(16.2%),R群で3/20(15.0%),局所再発率は全体で6/88(6.8%),L群で5/68(7.4%),R群で1/20(5.0%)(p=0.714)であり,統計学的有意差はなかったがR群で低い傾向を認めた.
【考察と結語】ロボット支援手術は腹腔鏡に比べ,より低侵襲であり重症合併症が有意に少なく,腫瘍学的な局所制御も比較的良好であった.ロボットの多関節機能,3Dビジョン機能を用いた精緻な骨盤操作は腫瘍制御に寄与すると考える.
【対象と方法】2009年7月~2023年12月までに当科で腹腔鏡下もしくはロボット支援下にISRを施行した下部直腸癌88例を後方視的に検討した.
【結果】腹腔鏡を68例(L群),ロボット支援を20例(R群)に施行した.(L群:R群)年齢中央値は64:67(歳)(p=0.71),性別は男性が63:70(%)(p=0.58).前治療は14:30(%)(p<0.01)とR群で有意に多かった.側方リンパ節郭清はL群で有意に多く(21:0(%)(p=0.03)),R群で手術時間は有意に短く(386:328(分)(p<0.01)),出血量も有意に少なかった(110:35(ml)(p<0.01)).短期成績では,合併症Clavien-Dindo grade≥III;19:5(%)(p=0.13)と統計学的有意差は得られなかったがR群で少ない傾向であった.また長期成績では,遠隔転移再発は全体で14/88(15.9%),L群で11/68(16.2%),R群で3/20(15.0%),局所再発率は全体で6/88(6.8%),L群で5/68(7.4%),R群で1/20(5.0%)(p=0.714)であり,統計学的有意差はなかったがR群で低い傾向を認めた.
【考察と結語】ロボット支援手術は腹腔鏡に比べ,より低侵襲であり重症合併症が有意に少なく,腫瘍学的な局所制御も比較的良好であった.ロボットの多関節機能,3Dビジョン機能を用いた精緻な骨盤操作は腫瘍制御に寄与すると考える.